2008.04.27
世界のナベアツと『GOLDEN LUCKY』
少し前から「世界のナベアツ」という芸人が面白いという評判をよく聞くようになり、YouTubeで見てみた。

お笑い 世界のナベアツ
http://www.youtube.com/watch?v=aIcANrVZgXE



<3の倍数と3の付く数字のときだけアホになり、8の倍数のときだけ気持ち良くなります>という前衛的なお笑いで、衝撃を受けた。ウィキペディアの解説によると、<3の倍数と3の付く数字のときだけアホになります>にはいくつかバリエーションがあるらしい。

世界のナベアツは賛否両論のようで、これを面白いと思うかどうか、評価・好みが大きく割れているようだ。

私は世界のナベアツを見て、『GOLDEN LUCKY (ゴールデンラッキー)』を思い出した。『GOLDEN LUCKY』はかつて「モーニング」に掲載されていた榎本俊二の4コママンガで、その前衛性から賛否が真っ二つに分かれていた。

ウィキペディア - GOLDEN LUCKY
http://ja.wikipedia.org/wiki/GOLDEN_LUCKY

<講談社の漫画雑誌「モーニング」に連載されていた4コマ漫画。シュールレアリスティックな描画と独特のテンポで、一部のファンから圧倒的な支持を受けた。モーニング連載当時には、読者アンケートで最下位を走り続けた。そのことが連載の立ち位置として認められていたようで、担当編集者は編集長から最下位でなくなったら打ち切りと通告されていた>。

この解説にもあるように、<一部のファンから圧倒的な支持>を受けながらも、<読者アンケートで最下位を走り続けた>という、まさに賛否両論の作品だった。

『GOLDEN LUCKY』は、通常の4コママンガのような起承転結、「オチ」で笑わせるのではなく、ひたすら「面白い動き」や「面白い表情」が中心という、子供っぽい感性を前衛化したようなマンガだった。テキトーなキャラクターたちが、ストーリーともいえないちょっとした状況のなかで、「面白い動き」や「面白い表情」を見せる。えんえん、それだけのマンガだった。

世界のナベアツの手法は、この『GOLDEN LUCKY』に近いものがある。

世界のナベアツは、3の倍数や3のつく数字のとき、アホ顔になる。そこには通常のお笑いのストーリー性、ボケやツッコミ、「オチ」みたいなものはどこにもない。「3の倍数や3のつく数字」というのはもはやストーリーではなく道具立てに過ぎず、それは「アホ顔」や「気持ちいい顔」を出現させるためにある。この構造は、キャラクターやストーリーを極度に単純化・道具化して「面白い動き」や「面白い表情」だけを追求した『GOLDEN LUCKY』に似たところがある。

これほど前衛的な笑いが、賛否両論とはいえ、それなりの人気を集めているのには驚いた。私は日本のお笑い番組などはぜんぜん見ていなかったのだが、こんなものが出てきているとは、日本のお笑いはすごい進化を遂げているのかもしれない。

関連:
世界のナベアツ
http://www.youtube.com/watch?v=qrLBEuoC0OQ
英語、フランス語、スペイン語でもこの芸がウケるか、現地人に試している。

えの素のえ - 反逆のゴッキー
http://www.enomotonoe.com/Gocky/gokki-top.htm
榎本俊二公認ファンサイトの『GOLDEN LUCKY』情報ページ