2003.09.03
秋山仁の思い出
今週もまた、「トリビアの泉」を見てしまった。こんなものを見ても、ぜんぜん役に立たないのに‥。

今週は12歳の女の子が投稿した、「111111111×111111111=12345678987654321」というトリビアが89へぇで、最高得点だった。このトリビアの解説映像に、長髪にヒゲの数学者、東海大学教授の秋山仁が出ていた。

ちょっと前、秋山仁はもっとテレビに出ていたと思うが、ひさびさに見た気がする。ちょっとヤセた?

いまから10数年前、私はお茶ノ水の予備校に通って浪人していた。その予備校で、数学の講師の1人が秋山仁だった。秋山仁はその頃からあの風貌で、教師としては人気があったが、まだテレビに出るような売れっ子ではなかった。

秋山仁はいつも眠そうな疲れた感じで教壇にのぼり、要点をまとめたプリントを配って、時間の半分くらいで解説を終え、あとは面白い余談や、大学レベルの数学の話などをしていた。秋山仁は「弟子」を何人か養っていて、秋山プリントなどの作業は弟子たちがやっている、と言われていた。

予備校業界というのは人気商売であり、どこか芸能界に近いところがある。頂点に近い人はかなり稼ぐが、末端のほうの人は食うや食わずやの生活。

秋山仁は、自分は落ちこぼれだったとしょっちゅう言っていたが、たしかにエリート学者というよりは、はるかに芸人に近い人だと思う。そして、ちょっと芸能界に似ている予備校業界というもの全体が、誤解を恐れずに言えば、落ちこぼれ的であり、芸人的なところなのだという気がする。

先日、どこかの番組(たしか「BBWAVES」だったと思うが)で個人指導塾の経営者が、「そう言うとよく反発を食らうが、私は教育はサービス業だと思っている」みたいなことを言っていた。私はそんなことは当たり前だと思っていたので、反発する人がいることのほうが驚きだ。

秋山仁はただの予備校教師ではなく、大学教授であり、テレビにも出て、本も書いている。しかし私にとっては、秋山仁はいまでも忘れられない予備校教師であり、いい教師だった。

たくさん知識があって、たくさん論文を書いていて、偉い学者であっても、いい教師であるとは限らない。大学には、黒板にノートを写し、ぶつぶつしゃべるだけの先生がたくさんいる。

秋山仁は、落ちこぼれであり、芸人であるからこそ、いい教師だったのだと思う。教育はサービス業であり、芸だからだ。