2003.09.26
戸田ツトムの講演
Apple G5 Solution Fairの続き)

私はずっと昔から戸田ツトムのファンで、特に彼の「断層図鑑」という本が死ぬほど好きだった(戸田ツトムとは誰なのか、そして私がどれくらい好きだったかについては、以下を読んでほしい)。

「断層図鑑」の紹介(1998年、ホットワイアード「CAVE」)
http://www.hotwired.co.jp/cave/work/w16005.html

私はあまりイヴェントなどの情報通ではないが、戸田ツトムの講演というものが存在したというのをこれまで一度も聞いたことがなかった。戸田ツトムのテキストを知っている人ならわかると思うが、あの戸田ツトムがどんな人で、どんなことを、どんなふうにしゃべるのか、まったく想像できなかった。とにかく戸田ツトムの話が聴けるというだけで速攻で申込みボタンを押し、東京国際フォーラムにやってきた私である(こんな貴重なものを無料で実現したアップルに拍手)。

アップルのフェアでの講演ということで、せいぜい30~40人くらいの規模なのかと思っていたら、ものすごい規模の会場で、事前予約した人だけで数百人は並んでいた。スターウォーズ新作の封切り初日みたいな感じだ。


開場、まるで映画館だ

とはいえ、セミナーとしては「Design & Photo Creative」という括りで、デジタルカメラの世界で有名な望月宏信氏との組み合わせだったので、おそらく望月氏のファンの方が多かったに違いない(?)。戸田ツトム目当てで来た人が何人いたのか気になる。

前半が望月氏で、後半が戸田ツトム。初めて見た戸田ツトムは、もうそれなりの年齢のはずなのに、予想外に若く見え、そしてしゃべりもハキハキして丁寧な感じで、まったく意表を突かれた。ちょっと扱いにくい、口数も少ないインテリかと思っていたのだ。


戸田ツトムの講演

しかし話の内容は、やはり戸田ツトム以外の何者でもない講演だった。ものすごい濃密な内容で、暗闇の中でメモをとりながら聴いた。とてもここには書ききれないので、配布資料に書いてあったアウトラインだけ書いておこう。

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2003 Apple G5 Solution Fair
10.26 2003
デザイン、第三の環境へ
-- 2003年現在、いま何が起きているのか

1980年代中期から
2003年今秋の現在にいたるまで
私たちの周辺に起きた空間の変貌
また私たち自身の変容について。

デザインとコンピュータの15年
1989年に起きたこと
「空間」としてのグーテンベルグ
ルネサンスへの回帰
「デスクトップ」というあらたな住まい
メタファーの遠近法とMacintosh
道具としてのコンピュータ?
「現実」という法律
手触りの消失

文字の遠近法とメディアのズレ
場所の記憶、陰影、マージナルゾーンの消失
インターネットの「空間」とは‥
視覚の20世紀、戦争の世紀
視覚と戦争
「読む」ことの危機
「視る」ことの敗退
距離の消失と場所の忘却

速度と交通
デスクトップ・メタファーの変貌
コンピュータの再出現
パースペクティブからマトリクスへ‥
新しい経済と圧縮された「瞬間」
第三の環境、到来

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戸田ツトムは、並の講演の10倍くらい密度のあるこの内容を、約1時間、原稿などを一切見ないで、まっすぐ前を見て話していた。

まるで、この日のために本を一冊書き下ろして、それが全部頭の中に入っているみたいだった。上記のアウトラインは、その各章のタイトルだったのだ。