2005.10.20
投資の社会的責任
仕事の場合、とにかくお金がもらえればなんでもいい、と考えるだろうか?
お金も大事だが、やりたいこと、誇りを持てること、自分が成長できること、なども重視するはずだ。
世間に迷惑をかけてまで、お金を稼ぎたいとは普通考えないだろう。

ところが投資となると、とにかくお金が増えればなんでもいい、儲かるところに投資する、
と考えがちな人が多くなってくる気がする。

ビジネスの中には、いいものと悪いものがある。
社会を良くするのが「いいビジネス」で、悪くするのが「悪いビジネス」だ。
ここでの「悪い」とは、違法という意味ではない。
違法ではなくても、社会に悪影響を与える「悪い」ビジネスはいくらでもある。

お金を投資するときは、「いいビジネス」に投資すべきだ。
「いいビジネス」に投資すれば、社会を良くするのに間接的に貢献することになる。
逆に「悪いビジネス」に投資すれば、社会を悪くするのに間接的に加担することになる。

決して、「利回り」だけで判断してはいけない。
社会を悪くするほうが「利回り」がいい場合があるのだ。

例えば、工場で製品を作る過程で、有害物質が出るとする。
それを適切に処理するにはコストがかかるが、近くの川に垂れ流せば、コストがかからない。
自己利益のために社会や自然を害したほうが、その会社の利益率が良くなることになる。
つまり、有害物質を垂れ流す会社に投資したほうが、「利回り」が良くなるのだ。

有害物質を垂れ流すのは明らかに違法だが、違法かどうかが問題なのではない。
例えばスパムメールを送る業者などは、違法ではないかもしれないが、
社会に迷惑をかけている点では、有害物質を垂れ流すのとほとんど同じだ。
こういう「自分が儲けるために、社会や自然を害する」というビジネスは、どこにでもある。
これこそ「Win-Loseなビジネス」であり、「悪いビジネス」だ。
いくら財務諸表の数字が良くても、いいビジネスとは限らない。

お金は大事だが、万能でもない。
需給で成り立つ「市場」も素晴らしいものだが、需給とは「人気」の表出に過ぎない。
多数が判断を誤れば、市場も判断を誤る。
多数がつねに正しいわけではないことは、歴史が証明している。

「利回り」なんて、短期的なものだ。
ひたすら利回りだけを追求すれば、「悪いビジネス」を選んでしまうことがある。

「いいビジネス」は、社会に貢献しながら利益を生む「Win-Winなビジネス」だ。
いいビジネスは、悪いビジネスに比べて「利回り」が低いこともある。
それでも、いいビジネスに投資すべきだ。

いま、お金があまっているという。
そのお金をどこに回すかが、きわめて重要なのだ。
お金をどのように「配置」するかで、社会のゆくえが決まる。