2008.05.01
効用、限界効用、ゴッセンの法則、パレート改善
最近、経済学をちゃんと学びたいと思うようになってきて、入門書を読みはじめた。
興味があって自習する勉強は、ほんとうに楽しいし、よく理解できる気がする。

経済学では人間を単純化したり、大胆な仮定をしたりするが、その典型のひとつが「効用」という概念だ。

効用
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B9%E7%94%A8

<効用(こうよう)とは、ミクロ経済学で用いられる用語で、人が財(商品)を消費することから得られる満足の水準を表わす>。

この「効用」概念により、満足度を計測できるものとしてしまえば、すぐに「限界効用」という概念が出てくる。

限界効用
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%90%E7%95%8C%E5%8A%B9%E7%94%A8

<限界効用(げんかいこうよう)とは、財1単位の消費による効用の増加分のこと。より厳密には、効用関数を財の消費量で偏微分したもの。ミクロ経済学で用いられる重要な概念である。なお、ここでは、財が必要なだけ充分小さい単位に分割できるものと仮定されている>。

例えばチョコレートが食べたいと思ったとき、チョコを1個食べたときの満足度の上昇分と、さらにもう1個食べたときの満足度の上昇分を比べると、2個目の上昇分のほうが小さい。3個、4個と増えていけば、さらにだんだん小さくなる(あるいは苦痛に転じる)。これは誰でも経験的にわかるだろう。1個あたりの満足上昇分が「限界効用」なので、限界効用はだんだん小さくなっていく。

そして、いま手元にお金が1000円あって、1000円で食事とおやつを買いたいとする。どこで何を買ってもいいならば、ここで食事とおやつの選択の余地はかなり広い。

ここで人間は、何をどれだけ買うかのバランスをどう決めるかというと、「効用が最大になるように」選ぶ。仮にチョコが好きな人でも、1000円分チョコを買うことはしないはずだ。チョコは1つか2つ買えば、限界効用が低下してくるので、他のものを買ったほうが限界効用が高いのだ。

限界効用はだんだん小さくなっていくこと。そして合計金額などの制約があるときは、効用が最大になるようにバランスをとること。この2つの当たり前のことを法則化したものがあり、ゴッセンの法則というらしい。

ゴッセンの法則
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4...

ゴッセンの第1法則は、<限界効用逓減の法則(げんかいこうよう ていげんのほうそく)ともいう。一般的に、財の消費量が増えるにつれて、財の追加消費分から得られる効用は次第に小さくなるという経験則。 限界効用理論が成立するための前提条件となる>。

ゴッセンの第2法則は、<限界効用均等の法則(げんかいこうよう きんとうのほうそく)ともいう。人が効用を最大化するとき、各財への貨幣の最終支払単位によって得られる限界効用(財の限界効用と価格との比)がすべて等しくなる>。

そして人間が2人以上になると、財を交換できるようになるので、各人間の効用を増すように財を配分する、という話になる。これが「パレート改善」。

パレート改善
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91...

<ある資源をある集団に分配する際に、誰の効用も悪化させることなく、少なくとも一人の効用を高めることができるように資源配分を改善すること>。

パレート改善については、以下のページの解説が、具体的な数字もあって詳しい。

交渉学と合意形成 - パレート改善
http://www.mmatsuura.com/negotiation/lect/lecture4.html

このページでは紅茶と日本茶を題材に解説されているが、これをチョコとお茶に置き換えて、すごく簡略化すると、以下のような感じになる。

AとBの2人の人間がいて、Aがチョコをいくつか、Bがお茶を何本か持っていたとする。ここでは、ある程度チョコとお茶を交換したほうが、互いにトクなので(=互いの効用を増すので)、交換がはじまる。これがパレート改善。

その交換を進めていくと、どちらかが「これ以上は交換できない」と思う地点が来る。これが「パレート最適」。

以上、「効用」概念から「パレート改善」まであっというまに進む感じで、特にむずかしいところはないと思う。

ゴッセンの法則も、パレート改善も、ごく自然な話に思えるし、当たり前ですらある。

しかし、ここで前提になっている「効用」とは何なのか。ほんとうに計測できるのか。

「効用」の解説によると、効用の計測については、大きく2つの立場があるらしい。

<効用を測定する方法としては、基数的効用(Cardinal Utility)と序数的効用(Ordinal Utility)とがある。前者が効用の大きさを数値(あるいは金額)として測定可能であるとするのに対して、後者は効用を測定不可能ではあるが順序付けは可能であるとする点で異なり、両者の違いは、これは効用の可測性の問題として、効用の概念の発生当初から議論の対象であった。
 当初は基数的効用の考えが主流であり、効用は測定可能で、各個人の効用を合計すれば社会の効用が計算され、また、異なる個人間で効用を比較したり足し合わせることも可能であると考えられた。

 しかし、効用の尺度として客観的なものを見出すことができなかったため、現在では多くの経済学者が、「ある選択肢が、他の選択肢より好ましいかどうか」という個人の選好関係をもとに、より好ましい財の組み合わせはより大きな効用をもつ、という意味での序数的効用によって効用を考えている。序数的効用では効用は主観的なもので、異なる個人間で比較することも、各個人の効用を足し合わせて社会全体の効用を測定することもできないとされる>。

そして「限界効用」のページには、経済学の歴史において「効用」や「限界効用」がいかに重要な位置にあるかが書かれている。「効用」は決して自明のものではなく、経済学はまさに「効用」という基礎概念をめぐって揺れ動きながら、発展してきたようだ。

私はずっと、経済学というのは数学だらけというイメージを持っていたのだが、この「効用」という概念から入ると、人間的でなじみやすく、スッとわかったような感じがする。

それと、こうして楽しく自習できるのはやはりインターネットが大きい。もちろん本も読んでいるのだが、ウィキペディアや個人の解説ページなどをいろいろ調べられて、関連ページにもポンポン飛べるのがいい。ホントいい時代になった。