2008.05.08
ウィキペディアの「誤謬」(ごびゅう)の解説がすばらしい
経済学の「合成の誤謬」などで知られる「誤謬」(ごびゅう)。

日常生活や話し言葉ではほとんど使わないこの「誤謬」(ごびゅう)だが、ウィキペディアの解説が実にすばらしい。

ウィキペディア - 誤謬
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%A4%E8%AC%AC

<誤謬(ごびゅう、英: Fallacy)とは、論証の過程に論理的または形式的な明らかな瑕疵があり、その論証が全体として妥当でないこと。論証において、誤謬には「形式的」なものと「非形式的」なものがある>。

面白いのは、このページの「非形式的誤謬」のところにある例だ。「非形式的誤謬」とは、大雑把にいえば自然言語(日本語や英語などの、いわゆる言語)による誤謬のこと。ここには、そのいろいろなパターンが集められている。以下、いくつか抜粋。

・例外の撲滅 - 例外を無視した一般化を元に論旨を展開すること。「ナイフで人に傷をつけるのは犯罪だ。外科医はナイフで人に傷をつける。従って、外科医は犯罪者だ。」

・早まった一般化 - 十分な論拠がない状態で演繹的な一般化を行うこと。「1,2,3,4,5,6はいずれも120の約数だ。よってすべての整数は120の約数である。」

・間違った類推 - 類推を大前提として三段論法的な論旨を組み立てること。例えば、「宇宙は時計のように複雑だ。しかしどんな複雑な時計にも設計者がいる。だから、宇宙にも設計者がいるに違いない。」

・偏りのある標本 - 母集団から見て偏った例(標本)だけから結論を導くこと。「(日本在住の人が)周囲には黄色人種しかいない。よって世界には黄色人種しかいない。」

・相関関係と因果関係の混同(擬似相関) - 相関関係があるものを短絡的に因果関係があるものとして扱う。「撲滅された病気の数とテレビの普及には相関関係がある。よってテレビが普及すれば病気が撲滅される。」(両者は時間の経過により独立に進んだだけだが、数値上は両者に相関ができてしまうので、因果関係があるかのような勘違いをしてしまった。)

・先後関係と因果関係の混同(Post hoc ergo propter hoc) - A が起きてから B が起きたという事実を捉えて、A が B の原因であると早合点すること。

・論点先取 - 結論を前提の一部として明示的または暗黙のうちに使った論証。形式的には間違っていないが、結論が前提の一部となっているため、全体として真であるとは言えない。「彼は正直者なんだから、ウソを言うわけないじゃないか。」

このように、どれも「あるある~」という感じで面白い。各パターンに名前・愛称がついているのも便利だ。

早まった一般化」、「擬似相関」、「先後関係と因果関係」、「論点先取」などは、独立ページで詳しく解説されている。

英語ページの「Informal fallacy」はさらに詳しくて、個別解説へのポータルのようになっている。

Wikipedia - Informal fallacy
http://en.wikipedia.org/wiki/Informal_fallacy

さまざまなfallacyがグループ分けされていて、グループにも名前がついている。例えば「Hasty generalization」(早まった一般化)は、「Inductive fallacies」(帰納に関する誤謬)に分類されている。

日本の「帰納」のページなども詳しいし、このあたりは充実したページがたくさんある。

関連エントリ:
原因と結果
http://mojix.org/2008/04/29/causes_and_effects