2008.06.06
自信過剰が男性を競争させる
経済学者・大竹文雄さんのブログで、面白い研究が紹介されている。

大竹文雄のブログ - 自信過剰論文のポスター
http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2008/06/post_0029.html

<東北大学で日本経済学会春季大会が開催されました。「自信過剰が男性を競争させる」という論文をポスターセッションで、大学院生の水谷徳子さんが報告しました(水谷徳子・奥平寛子・木成勇介・大竹文雄の共著)>。


(リンク先から、この資料「tohoku08poster.pdf」をダウンロードできます)

この研究は、以下の2点を「経済実験」によって明らかにするというものだ。

ⅰ)競争への嗜好に男女差が存在するのか?
ⅱ)競争への嗜好や自信過剰の男女差が競争的環境参入の男女差に影響を与えているのか?

4人からなるグループに、4つのタスク(計算問題)を与えて解いてもらい、結果の順位予想をしてもらう。このグループを構成する男女比を変えたり、「歩合制」か「トーナメント制」かという報酬体系(後者が「競争への嗜好」)をあらかじめ固定するか、事後に選択するかといった条件をいろいろ変えると、順位予想がどのくらい強気か(=自信過剰度)が変わる、といった研究らしい(この説明はあまり正確でないので、詳しくは上記リンク先にあるPDFファイル「tohoku08poster.pdf」を参照してください)。

こういう心理学みたいな経済学は、実験経済学とか行動経済学とか呼ばれるもので、経済学の新しい潮流のひとつらしい。

ウィキペディア - 行動経済学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%8C...

<行動経済学(こうどうけいざいがく)とは、経済人を前提とした経済学ではなく、実際の人間を前提とし、人間がどのように選択、行動し、その結果どうなるかを究明することを目的とした経済学である>。

<行動経済学は、心理学と深い関係にある。元々、心理学と経済学は一体のものであり、18世紀頃には経済学者は心理学者も兼ねていたとみることができる。例えば、アダム・スミスは『道徳感情論』(1759年)や『国富論』(1776年)で、合理性と心理面との関係について述べている。20世紀に入っても、ジョン・メイナード・ケインズなどが心理と経済との関係について述べている。
 その後、経済学は経済人を前提としたものが主流となっていったが、認知心理学の発展もあり、経済学と心理学は再び融合し、行動経済学という分野が研究されるようになった。
 2002年、行動経済学の立役者であるダニエル・カーネマンが、ノーベル経済学賞を受賞した>。

実験経済学との違いについては、こう書かれている。

<実験経済学は、研究のための方法のことである。行動経済学では、人間がどのように行動するかを実験経済学の方法によって調べる。つまり、「行動経済学を研究する数ある方法の一つに実験経済学がある」という位置づけとなり、両者は別のものである>。

この「自信過剰が男性を競争させる」という研究は、特に実験経済学や行動経済学を知らなくても、誰が読んでも面白い内容になっている。ということは、実験経済学や行動経済学という学問自体も、多くの人に「開かれた」面白さを持っているということだと思う。