2003.10.06
もし数字の「ゼロ」に特許があったら
CNET Japan: もうひとつのブラウザ戦争: IEついに敗れたり

かなり昔から問題になっているソフトウェア特許だが、この例を見ても、ソフトウェアに関する特許制度は技術開発を促進するどころか、特許に抵触する(地雷を踏む)のを恐れて技術開発を停滞させる面のほうが大きいことはほぼ明白だろう。

上記の記事の中で、勝訴したEolasのMike Doyleは、<訴訟の目的を、Microsoftの強欲からウェブを守るためだと説明している>そうだが、普段Microsoftに反対している企業ですら今回の訴訟ではMicrosoftを支持していることから明らかなように、むしろ特許をタテにして、人類全体の技術発展を阻害してまでも私利私欲を追求しているとしか言えないだろう。

今回Microsoft側の証人になったオライリーのDale Doughertyは、<われわれはMicrosoftの大ファンではない。しかし、ウェブの大ファンではある。問題はこの訴訟が、ウェブの特許権侵害が認められた最初のケースであることだ>と言っているというが、まったくその通りだろう。

もしアインシュタインやマックスウェル、ニュートンなどの物理法則が特許だったらどうなるか。あるいは足し算や引き算、数字の「ゼロ」などが特許だったら?ゼロを書くたびに、特許の保持者にライセンス料を払わねばならないとしたら?

「ゼロ」の発明者は、その発明に莫大な時間を投入したかもしれないし、その発明に対して何らかの名誉や報酬を与えられるべきだとは思う。しかし、もし「ゼロ」が特許で、使うのにライセンス料が必要だったら、その発明自体にほとんど意味がなくなるうえに、その「地雷効果」によって他の発明をも停滞させかねない。

特許というもの自体をなくしてしまっていいとは思わないが、少なくともソフトウェアや情報特許に関しては、大きな見直しが必要なことは明らかだと思う。

Update(10/6):
ソフトウェアやビジネスの方法に適用する特許を限定するEUの動きが、米国と衝突する恐れがあるという。
CNET Japan: EUの指令可決で、特許戦争勃発?