2004.02.19
話しかける書店員
先日、新宿ルミネ2の4Fにある青山ブックセンターで、マルサス『人口論』(中公文庫)を買ったときのこと。

ここの青山ブックセンターでレジを打っているのはたいてい若い店員だが、この日、私のレジを打ってくれたのは40代くらいの男性。

私の出したマルサス『人口論』を見て、陽気に話しかけてきた。「マルサスですか。私もこの本、持っているんですよ。昔の、ハードカバーですけどね。でも難しくてねえ、あまり読んでないんです。読んでると眠くなってくるんですよね~」といった調子。

私はあいづちをうちながら、内心とても喜んだ。こんなふうに「自分」を出す接客は、日本ではあまり出会わない。こういうのが、私は大好きなのだ。

この人は店長とか、それなりに役職のある人だったのかもしれない。もし若造がこんな出しゃばったことをしたら、マネージャーに叱られそうだ。

たしかに、こういう「一歩踏み込む接客」はリスクもあり、話しかけられるのが嫌いな人もいるだろう。しかし、通りいっぺんの接客よりも、きっと心をつかむと思う。

以前、本屋でレジから話しかけられたのは、たしかサンフランシスコの本屋だった。レジに本を出したとき、ちょっとオタッキーな感じの若い女性が、「これはいい本だ」とかなんとか言って、いろいろしゃべってくれた。私はヒアリングが弱くてあまり聞き取れなかったが、うれしかった。

マクドナルドのスマイルのような、通りいっぺんの、マニュアル通りのサービスも悪くない。しかしマニュアルを超え、集団から一歩踏み出した、個人としてのサービスのほうが、きっと心に触れる。
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