2004.03.27
図書館の歴史
アンドレ・マソン / ポール・サルヴァン著『図書館』(白水社 文庫クセジュ)を読みはじめた。

私は昔から図書館というものが大好きで、大学のときなどは毎日のように入りびたっていたほどだったが、図書館そのものの歴史や、図書館情報学などとはずっと無縁だった。

むしろ最近になって、Webのコンテンツ管理や情報アーキテクチャといった新しい分野のなかで、「図書館」というものを再発見しつつある。Webで出会ういろいろな課題は、図書館の分野でずっと取り組まれてきたものに近いことが少なくないのだ(例えば「カテゴリ分け」や、「欲しいものの検索」など)。

また実際、コンテンツ管理や情報アーキテクチャ、メタデータといった分野の専門家には、もともとは図書館情報学をやっていた人が少なくない。

この『図書館』という本は、第1部では古代から19世紀まで、図書館というのものがどんな歴史を辿ってきたのか、その変遷を語っている。第2部では、現代(20世紀)の図書館というものの現状について解説している。

<過去の遺産とは、まず第一には貴重な写本や図書という偉大な財宝のことであるが -- それらが略奪とか文芸擁護とか、種々の方法によって伝えられてきたことを知るのもたいせつ -- それらは、図書館に預けられてきたからこそ万人が利用できるようになったのである。
 過去の遺産とは、また偉大な画家や建築家 -- たとえばサンソヴィーノ、ミケランジェロ、クリストファー・レン、ティツィアーノ、ドラクロア等 -- の手でつくりあげられた図書館のための建築や装飾のことでもある。これらの巨匠の手になる、ラウレンティアナ図書館、ボドレイ図書館、サン・マルコ図書館、エスコリアル図書館、ザンクト・ガレン図書館、聖フロリアン図書館、コインブラ図書館などを訪れる人々は、あたかも大聖堂を訪れたときと同じような感動的な思いに沈みながら、この<思索の殿堂>を徘徊するのである>
(「はしがき」より)

<ローマや、神聖ローマ帝国の諸都市や、エペソス[小アジアの古都]やティムガッド[アフリカ北部の古代ローマ遺跡]等において発掘された、古代の著作者たちに関する数知れない参考資料によって、当時の公共図書館の外観や状況が推察できる。それらは2世紀ごろは、図書館の行政長官のもとに所属し、<官吏によって管理される公共サービス>を行なっていた。図書館の本は、書籍出版販売業者によってやとわれた写字生たちのアトリエで制作され、ふえていった。図書館の構成は、書庫と読書室からなり、入口正面にはミネルヴァの像が飾られた壁(へき)がんが設けられていた。著名な文人たちの胸像が、パピルスの巻物を排列した小部屋の周囲を飾っていた。
 図書館は、そこへ写本を調べにくる学識者たちのたまり場でもあった。しかしまた資料を家に借り出すこともできた。アウルス・ゲリレス[ローマの学者。123頃-165]はティボリの友人の家で夕食をとりながら、たまたま食卓に出された水の性質について論争が展開された。招待客の一人はテーブルを立って、町の図書館に行き、アリストテレスの本を持ち帰り、その論争に決定的な一節を読みあげた。このように図書館は、すでにこんな時代から一般に親しまれ、今日でいえばちょうどラジオの対談放送とでもいったような、聴衆のなかで大きな声で本を読む読者をもっていたのである>
(第1部「図書館の歴史 - 過去の遺産」第1章「古代」より)

こんな感じの風格のある本で、深く味わいながら読んでいる。