2005.11.03
Web APIの 「従量課金」は、Web 2.0時代の商用ソフトウェア
Dave Winer(デイブ・ワイナー)が、YahooやMicrosoftなどのサーチエンジンを持つ会社に対して、Google APIをオープン・スタンダードとして採用し、かつそのAPIを無償で無制限に利用できるようにしてほしいと呼びかけている

Let's make the Google API an open standard
http://www.clonethegoogleapi.com/

ネタ元はyomoyomoさん。ここでyomoyomoさんは<Googleはインターネット時代の「悪の帝国」最右翼>と書いているが、これはもちろんGoogleが悪だという意味ではなく、インターネット時代に入り、GoogleがMicrosoftにかわる「最強」企業になったという意味だろう。

このDave Winerの呼びかけでは、yomoyomoさんも引いている以下の部分が重要だ。

<Google needs competition. We need Google to have competition. You need to be competitive. We're close to the answer -- an open unlimited API that's easy to work with and compatible.>

(大意 : Googleには競争が必要だ。わたしたちも、Googleに競争してほしいと思っている。そしてあなたも、競争力を得る必要がある。わたしたちはその答えに近づいている -- かんたんに使えて、互換性のある、オープンで無制限なAPIだ)

Web APIの利用回数に上限をつけ、それ以上は有償となるモデルは、いわばWeb APIの「従量課金」だと言える。

あなたが何か新しいサービスを構築し、そこで既存のWeb APIを使って「マッシュアップ」をやったとする。そこでWeb APIが「従量課金」制になっていると、あなたのサービスの人気が出た場合、人気が一定レベルを超えたとたん、高額な支払いが発生することになる。

Web APIを通じてデータがオープンになっていても、このように無償での利用回数に制限があるのでは、真にオープンとはいえないことは確かだ。つまりWeb APIの「従量課金」は、「Web 2.0時代のプロプライエタリ(商用)・ソフトウェア」とも言える存在なのだ。

今回のDave Winerの呼びかけには、大きく以下の3つのポイントが含まれている。

1 各ベンダーのWeb APIの統一
2 Web APIの利用回数を無制限に
3 Googleには競争が必要

1は「スタンダード」が必要だ、というあたりまえの話。仕様が乱立すると、みんな困る。

2は「従量課金」という「新しいプロプライエタリ」に対するオープンソース的な挑戦。

3は「新たな最強企業」による独占の回避。YahooやMicrosoftなどの競合ベンダーに対し、ここをポイントにしながら2を提案しているところがいい。

Dave Winerはブログの先駆者であり、RSSの生みの親としても知られる。
間違いなくVisionaryの1人であり、時代の先を行くのみならず、
その技術によって実際に「時代を作り出してきた」といってもいい人だ。

そのDave Winerが、このテーマに「コミット(関与)」し、動きを見せたことに注目すべきだ。

私は昨年の4月、Googleに関して次のように書いたことがある(「Google、東京研究センター設立へ / セマンティック検索とGoogleの「方向」」)。

<最近のGoogleの動きを見ていると、そのあまりの勢いゆえに、このMicrosoftのポジションに、今後Googleが収まる可能性すらあると思えてくる。Googleが四方八方から、オープン技術による挑戦を受けるという構図だ>。

これがまさに、現実化しつつある気がする。
Google Baseが普及してくれば、Googleはますます「最強」化するだろう。

今後Googleがどう動くか、そしてYahooやMicrosoftなど競合ベンダーがどう動くか。
そして「オープンソース側」はどう動くか。
今回のDave Winerの提言は、「オープンソース側」からの言い分と見ていいと思う。
(「オープンソース側」といってもいろいろだが、大まかなポジションとして)

Googleを含め、もしWeb APIの「従量課金」をやめるベンダーが出てくれば、
「オープンソース側」に味方することになり、大きな支持を集めるだろう。
いくらアクセスしても無償のWeb APIがあれば、支持されないはずがない。