少し前、こんな記事があった。

傷害容疑：ヒップホップのメンバーを逮捕　水戸
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080213k0000m040133000c.html

＜茨城県警水戸署は１２日、水戸市米沢町、ヒップホップユニット「ＬＵＮＣＨ　ＴＩＭＥ　ＳＰＥＡＸ」のメンバー、林雅樹容疑者（３５）を傷害容疑で逮捕した。

　調べでは林容疑者は６日午後５時ごろ、水戸市内の洋品店に購入したＣＤやＤＶＤ計５枚を持ち込み「面白くない」などと文句を言った。男性店長（３０）が５１５０円を返金すると「なめてんのか。おれの街だぞ」と言いがかりをつけ、店内のリモコンなどで店長の顔を十数回殴り、左目などに１カ月の重傷を負わせた疑い。２人は以前から知り合いだという。

　「ＬＵＮＣＨ　ＴＩＭＥ　ＳＰＥＡＸ」は９３年に結成され、ソニーミュージックからアルバムとシングル計３枚を発売している。林容疑者は「ＤＪ　ＤＥＮＫＡ」として知られる。【山内真弓】

毎日新聞　2008年2月12日　22時27分＞

私はこの記事を、何度もくり返し読んだ。

＜購入したＣＤやＤＶＤ計５枚を持ち込み「面白くない」などと文句を言った＞、
＜「なめてんのか。おれの街だぞ」と言いがかりをつけ＞、
＜店内のリモコンなどで店長の顔を十数回殴り＞、＜２人は以前から知り合いだという＞など、
見事なフレーズの連発、そしてスピーディな展開に、不謹慎ながら笑ってしまった。

傷害事件の報道記事だが、文章に無駄がないので、シチュエーションの面白さがストレートに伝わってくる。
この山内真弓さんという記者、只者ではないはずだ。

そして何よりも、タイトルの＜ヒップホップのメンバー＞というフレーズ。「ヒップホップ」は音楽ジャンルだから、＜ヒップホップのメンバー＞というのは、＜ロックのメンバー＞、＜ジャズのメンバー＞というのと同じくらいヘンだ。

山内真弓さんはヒップホップに馴染みがなく、このフレーズに違和感がなかったのか、あるいは上司などに短くされてしまったのかわからないが、これほど完成度の高い記事でありながら、タイトルに＜ヒップホップのメンバー＞という妙なフレーズが入ってしまって、この記事はますます忘れがたいものになった。