2008.12.30
「オレはマジで果てしない」 北九州発のニート・ヒップホップ、野村「大東京」
YouTube - 「大東京」野村
http://www.youtube.com/watch?v=jkn8_-CxuVA



すごい才能。この面白さは「やばい」。もう何度も見ている。

クリスタルキング「大都会」をサンプリングして、ニート風のライム(歌詞)で自主制作ヒップホップに仕上げている。見事にくだらない映像もいい。

ラップもただ素人がしゃべっているような弱々しさで、それも息が続かなくて息切れ気味になる。それが、詞の内容・映像とピッタリ合っているのだ。

嗚呼 果てしない
オレはマジで 果てしない

というフレーズがサビで、「大都会」の「ああ~果てしない~」のところに合わせている。これが原曲に対してまったく音程が外れていて、それがむしろいい感じになっている。



こないだ会社 クビになって哀愁
おまえは歯医者 通ってる毎週

とか、

ガキの頃から 神童と呼ばれ
今や家族に 死んでと言われ

といったニート風のライムもいい(ちゃんと韻も踏まれている)。映像でところどころに入る、パラパラみたいに手足を交互に動かすアクションもいい。



単純に笑えて、ニートネタなど誰が見ても楽しめると同時に、けっこう本質的な部分で「これこそヒップホップじゃないか?」と私は感じた。

サンプリングネタとして、超有名な「大都会」のサビという大ネタだけを使い、あとはごくシンプルな打ち込みと「つぶやきラップ」しかない、みたいなプリミティブな感じが、シュガーヒル・ギャングシックをサンプリングした「Rapper's Delight」によって、サンプリングによるヒップホップの先駆となった)のような初期のヒップホップを思わせるものがある。

あるいは、いわゆるラップ・ヒップホップのコワモテな通俗的イメージとは逆を行く「弱いヒップホップ」という意味では、オタク(ナード)なヒップホップの先駆者デ・ラ・ソウルや、日本におけるその先駆者スチャダラパーなどに通じる、とも言えるかもしれない。そのアプローチが、日本のロスジェネ・ニート世代に蘇ったものとも見ることができる。

また、笑いの要素を持ったチープな自主制作音楽という点では、80年代中期、日本のインディーズ音楽の一翼を担ったナゴムなども連想できる。ナゴムの一員でもあった「人生」(電気グルーヴの前身)なんて、ノリやチープさなど、けっこうこれに近い感じだったと思う。

といった音楽ウンチクはともかく、音程が外れすぎの「オ~レ~は~マ~ジで~果~て~し~ない~」、ぜひ聴いてみてください。私はもう10回以上見たせいか、これがアタマから離れなくなって、困っています。