2011.03.19
『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』 気軽に見れてアートの面白さもわかる傑作ドキュメンタリー
Herb & Dorothy ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人
http://www.herbanddorothy.com/jp/



先日見た、佐々木芽生監督によるドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』。これが大傑作だった。評判が評判を呼んで、昨年末から異例のロングラン上映をつづけているらしい。



<郵便局員のハーブと、図書館司書のドロシー、夫婦共通の楽しみは現代アートのコレクションだ。選ぶ基準はふたつ。

1 自分たちのお給料で買える値段であること。
2 1LDKのアパートに収まるサイズであること。

慎ましい生活の中で約30年の歳月をかけコツコツと買い集めた作品は、いつしか20世紀のアート史残す作家の名作ばかりに!そんなふたりに、アメリカ国立美術館から寄贈の依頼がやってきて……>。

元・郵便局員のハーブ(夫)と、元・図書館司書のドロシー(妻)のヴォーゲル夫妻は、ちょっと変わったアートコレクターとして知られている。(1)自分たちの給料で買える値段で、かつ(2)自分たちの小さなアパートに置ける小さな作品、この2つの基準で、自分たちの気に入ったアーティストによる現代アート作品を買いつづけてきたのだ。



この映画は、ヴォーゲル夫妻やアーティストたちへのインタビュー、ヴォーゲル夫妻がアパートで過ごす様子などを中心に構成されていて、肩の力を抜いて、ごく気軽に見れる。ユーモラスでとぼけた感じの音楽もいいし、ハーブ(夫)とドロシー(妻)の気取らない、チャーミングな存在感が、全編にあふれている。



この映画は、ヴォーゲル夫妻の存在感も、映画の作り方もリラックスしていて、気軽に見れる。そのいっぽうで、ヴォーゲル夫妻がひたすら集めている現代アートの作品は、ミニマルやコンセプチュアルなど、一般に難解と見なされるものが多い。そのギャップがおもしろい。この映画を見れば、現代アートは近寄りがたいと感じていた人でも、きっとその面白さがわかると思う。



映画には、現代アートの作品と、それを作ったアーティストが多数出てくる。ヴォーゲル夫妻がアーティストのスタジオを訪れて、実際に作品を買う場面まで出てくるのだ。夫妻はいったんアーティストに惚れ込むと、そのアーティストをとことん追いつづける。夫妻が作品を買える金額は安くても、その情熱が伝わるので、アーティストの側も夫妻をよろこんで迎えいれるのだ。



ヴォーゲル夫妻は、自分たちの給料で買える小さな作品をこつこつ集めつづけ、結果として、世界的にも屈指の現代アートコレクションをつくりあげた。夫妻はその作品をいくつか売るだけで大富豪になれるのに、ひとつも売ることなく貧乏暮らしをつづけ、コレクションは全部、アメリカ国立美術館に寄贈した。

普通そう聞くと、「すごいな~」と思うところだろう。金儲けに興味のない、その無私の精神に対して、頭が下がる思いがする。しかしこの映画を見ると、実際の成り行きはそれだけではなく、もっとドタバタしていて、ユーモラスな一面もあったことがわかる。詳しくは、ぜひ映画を見てほしい。


関連:
Herb & Dorothy ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人
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