2013.03.30
水族館イワシに緊張走る 天敵クロマグロが水槽へ
朝日新聞デジタル - 水族館イワシに迫る危機 「緊張感を」マグロ軍団投入へ(2013年3月26日21時43分)
http://www.asahi.com/special/news/articles/NGY201303260016.html


大群で泳ぐマイワシ=21日午後0時35分、名古屋市港区の名古屋港水族館

<【半田尚子】最近、名古屋港水族館(名古屋市港区)のマイワシがたるんでいるらしい。渦状になってえさを食べる「マイワシのトルネード」が売りの黒潮水槽なのに、群れから離れ、はぐれてしまう。穏やかな環境に慣れたマイワシに活を入れるため、28日に天敵のクロマグロ15匹を投入する>。

このニュースは衝撃である。まず出だしがすごい。<最近、名古屋港水族館(名古屋市港区)のマイワシがたるんでいるらしい>って、なんでそんなことがニュースになるんだよ(笑)と、ほのぼのさせてくれる。しかしそれもつかのま、<穏やかな環境に慣れたマイワシに活を入れるため、28日に天敵のクロマグロ15匹を投入する>というくだりで、「これはたいへんだ」「マイワシはどうなっちゃうのか」と、読者を一気に引き込む。

<黒潮が流れる海は沖合で、マイワシが隠れられる岩陰などがない。そのため群れをつくって大きな魚から身を守る。水槽でも群れで泳いでいたが、最近、隅の方を1匹で泳ぐマイワシがいることがわかった>。


群れから離れ、1匹で泳ぐマイワシ(左下)。マンボウがゆっくりと近づく=21日午後0時21分、名古屋市港区の名古屋港水族館

<なぜ緊張感のないマイワシが現れたのか。担当の小串輝さん(46)は「『どうせ自分たちは食べられない』と気づき、油断しているのではないか」と話す>。

海では群れで泳ぐマイワシだが、水族館の水槽は安全なため、緊張感を失って、油断しているらしい、とのこと。緊張感を失ったマイワシが、1匹でのんびり泳いでいる写真(上)がすごくいい。

そして、いよいよマグロ軍団の投入である。

朝日新聞デジタル - 悠々マイワシに緊張走る 天敵クロマグロ、ついに水槽へ(2013年3月28日20時55分)
http://www.asahi.com/national/update/0328/NGY201303280013.html

<【宋光祐】3万5千匹のマイワシが泳ぐ名古屋港水族館(名古屋市港区)の黒潮水槽に28日、天敵のクロマグロ11匹が投入された。群れをつくって身を守る習性のはずが、群れから離れるマイワシが出始めたためだ。水槽内に緊張が走った>。

<クロマグロは、三重県南伊勢町で蓄養されていたものを約3時間かけて運んできた。搬送時に4匹が死んだが、11匹が投入された>。

なんと、クロマグロを15匹投入するはずが、搬送時に4匹が死んで、11匹になってしまった。たるんだマイワシに活をいれるという、つまらない仕事のために連れてこられて、15匹中、4匹も死んでしまったのだ。クロマグロもたいへんである。


活を入れるため投入されたクロマグロに追い立てられるマイワシ=28日午後、名古屋市港区の名古屋港水族館、高橋雄大撮影


クロマグロ(右)が入った水槽でトルネードを見せるマイワシ=28日午後、名古屋市港区の名古屋港水族館、高橋雄大撮影

<クロマグロが水槽に放された後も、マイワシは平然と泳いでいるように見えたが、担当の小串輝さん(46)は「いつもより緊張していますね」。ふだんは水槽の隅で、きれいな円錐(えんすい)形の固まりになって泳ぐのに、この日は水槽中央の底で渦巻き状に乱れていた。泳ぐスピードもいつもより速くなったという>。

クロマグロ11匹が投入されて、マイワシは予想通り、緊張感をもって泳ぎはじめたらしい。


水槽の中で力尽きたクロマグロ(中央)。周囲をマイワシが泳ぎ回っていた=28日午後、名古屋市港区の名古屋港水族館、高橋雄大撮影

<一方、クロマグロは水槽の隅で群れをつくらずに泳いでいた。新しい環境に戸惑っているらしい。小串さんは「クロマグロが水槽に慣れるまでに1週間はかかる。群れになって悠々と泳ぎ始めれば、マイワシにいいプレッシャーを与えてくれる」と期待する>。

いっぽうクロマグロのほうは、水槽に慣れず、元気がないようだ。上の写真についている、「水槽の中で力尽きたクロマグロ(中央)」というキャプションに大笑い。

マイワシに緊張感がない、というところから始まって、そこにクロマグロを投入する、という激動のイベントを伝えてくれた、すばらしい2つの記事。笑いと感動を、ありがとう。