2003.10.11
人間中心的な情報社会を求めて - カリ・ハンス・コモネン氏の講演
東京工芸大の上平さん(情報デザインの専門家で、私にワーマンを教えてくれた人)に誘われ、メルプロジェクトの公開研究会「人間中心的な情報社会を求めて:北欧の情報デザイン戦略」に行ってきた。


会場(東大本郷キャンパス内)へ行く途中にいたヤギ

スピーカーはフィンランドのヘルシンキ美術デザイン大学(UIAH)メディアラボから来日中のカリ・ハンス・コモネン氏。名古屋の世界グラフィックデザイン会議から、筑波のアジアデザイン国際会議への移動中に立ち寄った格好らしい。

UIAHメディアラボのなかで、コモネン氏はARKIプロジェクトを推進している。これはかつては「未来の家庭」プロジェクトと呼ばれたもので、生活・社会のなかで人間中心的なアプローチで情報テクノロジーを活用する、といった趣旨のプロジェクトらしい。


カリ・ハンス・コモネン氏。スライドには「needs & potentials in everyday life / empower people」とある

老人の居住施設のための実験では、貸し出しできる本にIDタグをつけておき、図書コーナーにいちいち返却したりしなくてもいいというシステムを実現。各入居者の部屋に本がバラバラにあるだけで「分散型図書館」になっていて、どの本がどこにあるかいつでもわかるという。


商品にIDタグがついていて、買うべきものかどうかをカゴが判定してくれる実験の映像

また質疑応答タイムでは、面白い質問がたくさん飛び交って盛り上がった。ある人の質問で、いまのように情報化が進む以前の古いものにも価値があり、例えば私のこの古いカバンは機能性では劣るが、すごく気にいっている、というのがあった。

これに対してコモネン氏は、まったくその通りであるとし、そのようないろいろな好みに社会が対応することができるのも、情報テクノロジーがもたらす利点です、といった回答をしていた(例えばイーベイや、ネット上での個人販売)。技術そのものというよりも、技術がどういう社会を可能にするかを重視するコモネン氏の視点がよくあらわれた回答だった。


Blogは技術システムと社会システムの交点にある

講演後にちょっと話したところ、コモネン氏はすべてのWebプロジェクトでZopeを使っているという。ARKIプロジェクトのページを見たら、たしかにPowered by Zopeだった。