2004.08.18
本を「放流」する - BookCrossing
PICSY BLOG : i-WATとユビキタスPICSYで、BookCrossing.comというのが紹介されていた。

BookCrossing.com
http://www.bookcrossing.com/

読み終わった本の表紙の裏にRFIDタグをつけて、ベンチの上など適当な場所に「放流(リリース)」する。

それを手にいれた人は、そのタグを見て、その本がBookCrossingのメンバーによって「放流」されたものだとわかる。その本を読んだ感想などを、日記としてBookCrossingに書き込むことができる。

これによって、放流された本がどういう人の手にわたり、どういうふうに読まれたかがわかる。これは面白い!

部屋が本であふれかえって困り果てている本ジャンキーは、きっと私だけではないはず。どうしても定期的に本を買うから、増えるいっぽうだ。かといって、捨てたり、古本屋に売ってしまうのもしのびない。

本を友人とシェアしたり、私設図書館のような仕組みを作れないか、などとときどき考えたりするが、決定的な名案はなかなか浮かばない。

このBookCrossingは、本を「放流」したその後がわかるというのが画期的だと思う。

大学1~2年の頃(1988~1989年頃)、お茶ノ水の貸レコード屋JANIS(いまでもあるが)にせっせと通いつめていた時期があった。ニューウェイヴやネオアコなどのマニアなLP(ゴー・ビトゥイーンズとか、アイレス・イン・ギャザ、ウィークエンドなど、そういったもの)を毎回、行くたびに大量に借りていた。

JANISの貸しレコードの裏には通信欄があって、感想を書き込めるようになっていた。同じアルバムを借りるような趣味の近い人のあいだで、ちょっとした交流が起きるような仕掛けだ。

人と人とのつながりは、何かを「媒介」として生じる。かつてのJANISでは「レコード」だったが、BookCrossingの場合は「本」である。

Webの登場により、このような「出会い」の仕組みは、はるかに作りやすくなった。よく知られた「関心空間」なども、この種の考え方を早くから採用しているサイトだろう。

ソーシャル・ネットワークでも、もともとの知り合い、「既存の関係」を表現するだけの原始的形態から、コミュニティやレビューなどを媒介にした「新しい関係」を提供するほうにシフトしつつあるように見える。

BookCrossingは、本を媒介にして新しいネットワークを作るだけでなく、部屋を物理的に圧迫している本を「放流」して、本の所有者もハッピーになれるところがいい。これこそまさに、見事な「ソリューション」だ。

とはいえ、あまり貴重でない本は「放流」してもいいけど、それなりに貴重な本の場合は、不特定多数に向けて「放流」するのは気が引ける、というのはある。

なんらかの管理組織が所有するかたちで、その会員だけがそれをシェアできる、というクローズドなかたちもやっぱり必要かな、とも思う。