2005.11.05
Amazon Mechanical Turk
Amazonが「Mechanical Turk」という面白いことを始めて、ブログ界に反響が起きている

Amazon Mechanical Turk
http://www.mturk.com/mturk/welcome



ここにはたくさんの「仕事」がある。
誰でもそれを好きなだけやって、稼ぐことができる。

ここにある「仕事」は、「HIT(Human Intelligence Task)」と呼ばれる。
ソフトウェアでは処理できない、人間の知性を必要とするタスク(作業)だ。

仕事の依頼者は「Requester」と呼ばれ、誰でも依頼者になれる仕組みらしい。
いまのところは、Amazon自身である「Amazon Requester Inc.」だけのようだ。

いま「Amazon Requester Inc.」から出ている「仕事」は、例えば以下のようなものだ。


(注:リンク先はこの「仕事」ですが、時間の経過に応じて変化したり消滅していると思います)

<Rkl Garden Inc -- Palo Alto, CA

Please look through the following images that are taken near Rkl Garden Inc.
Choose the picture that best represents the storefront. If none of the pictures look good, you can select 'None of the above'.

Location of business: 716 San Antonio Rd, Palo Alto, CA 94303.>

大意:
Rkl園芸株式会社 -- カリフォルニア州パロアルト

Rkl園芸株式会社の近くで撮影された、以下の写真を見てください。
正面写真にふさわしい写真をここから選んでください。ふさわしいものがなければ、「ここにはない」を選んでください。
所在地:716 San Antonio Rd, Palo Alto, CA 94303.


このような文章の下に写真が数枚並んでいて、建物の正面写真としてもっともふさわしいものを選ぶ、という「仕事」だ。

(ちなみにこの写真は、Amazonが街に車を走らせて、機械で自動撮影したもの。以前「A9 Yellow Pages」で書いた話)

この仕事に対して、報酬は3セント(約3円)だ(笑)
たしかに単純作業だけど、3円かよ!

まだこれで現実的に稼げるレベルではないが(たくさんやれば、子供の小遣いくらいにはなるかも)、まずこのような仕組みをAmanzonが作り出したことがすごい。

これは単なるジョブマッチングではなく、ジョブ(仕事)そのものができてしまう「職場」になっているのが新しいと感じる。
情報技術の革新が、「働きかた」や「仕事のかたち」を変えていく段階に入りつつあるのかもしれない。

Amazonは、本をスキャンしはじめたのもGoogleより早かった。
この「人間にしかできない作業」に目をつけたのも、徹底的に自動化主義であるGoogleとは一線を画している感じだ。

Amazonもアップル、Googleと並ぶ革新の担い手であることをあらためて印象づける、注目すべき動きだと思う。


補足 (11/5) :

これは単に「オンラインで作業できるバイト」というだけの話ではなく、Web APIによってソフトウェア連携ができる、というのがミソだ。

このタスク部分だけは人間がやるが、タスクの入力とタスク結果の取得はソフトウェアでできるので、人間と機械の協働による「マン=マシン・システム」になるわけだ。

サービスのサブタイトルになっている「Artificial Artificial Intelligence(人工的な人工知能)」というのも、ソフトウェアの仕事の一部を人間が代行する、ということを指すのだろう。

「Mechanical Turk」とは、18世紀のヨーロッパにあらわれたチェスを指す機械に由来しているとのこと。ベンジャミン・フランクリンやナポレオンなども打ち負かし、人々を驚かせたが、実は中にチェスの名人が入っていたらしい。


関連エントリ :
A9.com Maps - ミラーワールド時代の到来
http://mojix.org/2005/08/17/110815
A9 Yellow Pages
http://mojix.org/2005/01/31/163117
日本のネットベンチャーが技術革新よりも 「ネット財閥」 をめざす理由
http://mojix.org/2005/10/30/233716