2008.03.26
感情的な行動を合理的に説明する
きのうの「経済に関して一般人が陥りやすい4つのバイアス」で紹介した『The Myth of the Rational Voter』という本について、昨年この本が出たときに、池田信夫氏がズバリのエントリを書いていた。

池田信夫 blog - The Myth of the Rational Voter
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/d1ec637b8020a6bca0d555f67d921ff1

<政治学に「合理的選択派」というのがある。アローの不可能性定理やゲーム理論などの合理主義で政治を分析しようというもので、数学的な証明の論文はたくさん出ているが、まったく実用にならない。本書は、これをひっくり返し、人々が非合理的に選択することを実証的に示したものだ。主なバイアスとしては

 ・反市場バイアス:市場メカニズムをきらう
 ・反外国バイアス:輸入品をきらう
 ・雇用バイアス:雇用の削減をきらう
 ・悲観バイアス:経済状態を実際より悪く評価する

といったものがある。率直にいって、マンキューが裏表紙で絶賛するほどおもしろい本ではないが、彼がこういう本を絶賛することに意味がある。経済学業界では、もはや「合理的な経済人」はオールド・ファッションなのだ。これは実証科学として健康なことだが、問題は「非合理的な行動」をどう合理的に説明するかだ。これについて著者は、自分のブログで、当ブログでも5/10に紹介したPaul Rubinの進化心理学的な説明をあげている>。

私は池田氏のブログを愛読しているので、このエントリも潜在的に覚えていたのかもしれない。

4つのバイアスについても、きわめてシンプルかつ的確な訳語・説明があてられていて、さすがだと驚いてしまった。

このエントリのコメント欄で、池田氏は以下のような補足をしている。

<言語にしても感情にしても、人間の認知的な行動の大部分は「小集団の維持」という機能と切り離せません。孤立した個人が「効用最大化」するという仮説は、生物学的に正当化できないのです。感情的な行動を単に非合理的と片づけるのではなく、遺伝や文化的進化の結果として合理的に説明することが、経済学の次のフロンティアでしょう>。

これは面白い。たしかに、最近は「行動ファイナンス」や「行動経済学」など、心理学ベースのアプローチについて、よく見聞きするようになった。

ウィキペディアで「プロスペクト理論」、「認知バイアス」といった、その関連のページを見はじめると、面白くて止まらなくなってしまう。