2008.03.25
経済に関して一般人が陥りやすい4つのバイアス
Bryan Caplanの 『The Myth of the Rational Voter: Why Democracies Choose Bad Policies』 (合理的投票者という神話:なぜ民主主義は悪い政策を選んでしまうのか)という本は面白そうだ。

The Myth of the Rational Voter: Why Democracies Choose Bad Policies
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Myth_of_the_Rational_Voter

私はまだ本を入手していないので、以下はこのウィキペディアの解説ページが正しいという前提で、私の興味を引いたポイントを紹介してみたい。

この本では、一般人と経済学者に対する調査結果をもとにして、誤った政策決定がたくさん生み出されてしまう原因は、一般人が経済について次のようなバイアス(偏向)を持っているからだ、としている。

1. Make-work Bias (雇用維持バイアス)

tendency to underestimate the economic benefits from conserving labor
労働しないことによる経済的利益を過小評価する傾向

2. Anti-foreign Bias (反外国バイアス)

tendency to underestimate the economic benefits of interaction with foreigners
外国人と取引することによる経済的利益を過小評価する傾向

3. Pessimistic Bias (悲観バイアス)

tendency to overestimate the severity of economic problems and underestimate the (recent) past, present, and future performance of the economy
経済問題を深刻に捉えすぎる傾向と、過去・現在・未来の経済成長を過小評価する傾向

4. Anti-Market Bias (反市場バイアス)

tendency to underestimate the benefits of the market mechanism
市場メカニズムが生みだす利益を過小評価する傾向

(以上は要点のみ抽出したもので、日本語訳は私のもの 詳しくは上記ページを読んでください)

主にアメリカを想定して書かれているようだが、日本にあてはめて考えても大体ピンとくるものばかりだ。特に、1の「雇用維持バイアス」と3の「悲観バイアス」が、日本では強いように感じる。

1の「雇用維持バイアス」とは、いまやっている仕事をなくさないで、雇用を維持したほうが(経済的に)いい、という考え方。これについては、この200年で農業従事者が全人口の95%から3%に減ったことを挙げ、そのぶんiPodを作ったり、コミュニケーション・ネットワークを開発したり、レストランを経営する人が出てきた、としている。

この話は、そう言われれば頭では理解できる人でも、いざ自分がスキルチェンジを求められたり、実際に職を失いかねない立場になれば、「職にしがみつく」抵抗勢力になるかもしれない。

3の「悲観バイアス」は、経済問題(今回のサブプライム問題などもそうだろう)を深刻に捉えすぎる傾向と、経済成長を過小評価する傾向らしい。これはどちらかというと、アメリカ人はむしろ楽観的に捉えすぎていて(それが強みでもあるのだが)、悲観バイアスは日本人のほうがはるかに根深いと思う。日本はこの「悲観バイアス」で何かと損をしている気がするので、アメリカ人の楽観主義・チャレンジ精神をせめて半分でももらえればと思う。

私は経済についてはからっきし弱いが、この本はぜひ入手して、がんばって読み通したいと思わされた。