2008.10.05
「講義ノート屋」を支持する
asahi.com - 「講義ノート屋」氷河期 京阪神の大学で「閉店」続出(2008年10月4日19時12分)
http://www.asahi.com/national/update/1003/OSK200810030055.html



<きちんと大学の講義に出た人のノートを1、2万円で買い取り、その写しを1部数百円で売る。こんな学生相手の「講義ノート屋」に逆風が吹いている。学生の「まじめ化」やノートの質の低下が原因だ。大学の視線も厳しくなり、一部の繁盛店をのぞき、次々と倒れている>。

おお、「講義ノート屋」がニュースになっている。以前とりあげたこの話だ。

大学の講義ノートを売るビジネス
http://mojix.org/2008/07/26/univ_lecture_note_biz

記事によると、<きちんと大学の講義に出た人のノートを1、2万円で買い取り、その写しを1部数百円で売る>とある。なんだ、買うほうはたったの数百円だったのか。安いじゃん。

<関西では数十年前から存在し、印刷会社などが営んでいた。「関関同立」「産近甲龍」と言われる有力私大の周辺にはどこにもあったのに、近畿大(大阪府東大阪市)は5年ほど前、それより前に関西大(同吹田市)、甲南大(神戸市東灘区)で姿を消した。関西学院大(兵庫県西宮市)でも2年ほど前になくなった。いまも残っているのは、立命館大、同志社大(京都市上京区)、京都産業大(同北区)、龍谷大(同伏見区)などだけだ>。

<冬の時代を迎えた理由について、大学関係者は「就職氷河期」を迎えた10年余り前から、学生の講義への出席率があがったことを挙げる。就職のために、単に単位をとるだけでなく「優」の数を増やそうとする学生が目立つようになったうえ、出席をとる講義も増え、写しを買う必要が薄らいだのだ>。

これ、ホントだろうか? 出席していた人でさえ買うそうだし、情報は少しでも多いほうが試験対策にもなるはず。たった数百円なら、目くじら立てることもないのでは。

この記事読んで初めてわかったが、これを売っている「印刷会社など」って、いわゆる「コピー屋」でしょう。

大学の講義ノートを売るビジネス」にも書いたが、私が大学の頃(約20年前)は、試験対策のプリント(シケプリ)を学生が自主的に作って、それが出回っていた。そういうシケプリの場合も、コピー代とコピーの手間はかかる。友達からノートを借りたりした場合も同じだ。

実際、大学の近くのコピー屋は、試験前になると行列ができて、コピーするのもままならなかったりする。コピー屋は、試験のシーズンごとに繰り返されるその光景を見ているわけで、「これなら、講義ノートを買い取って、大量にコピーして売ったほうが早い」と考えるのは当然だろう。コピー屋も学生も、お互い時間が節約できる。

1部数百円というのは、もはや「コンテンツの価格」ではなく、ほとんどコピー代そのものだ。学生ひとりひとりが手動でコピーしていたのを、コピー屋が効率的に一括で印刷しただけの話に思える。みんなが同じことを、手間をかけていちいち手動でやるよりは、機械で一括処理したほうがいいに決まっている。

講義に出席しないで、この「講義ノート」だけで切り抜けようとするのはけしからん!という考え方は当然あるだろう(私は別にそれでも構わないと思うが)。しかしだからといって、「講義ノート屋」の存在が悪いかのように言うのはおかしい。

「講義ノート屋」は、ビジネスでよく言われる「業務の効率化」「生産性の向上」をもたらしているわけで、それを1部数百円というほとんど原価で提供しているわけだ。すばらしいソリューション・カンパニーじゃないか。悪どころか、むしろ救世主だ。

私は「講義ノート屋」を支持する。