2008.12.10
能力は「掛け算」で効く - ロバート・フェルドマン『一流アナリストの「7つ道具」』
一流アナリストの「7つ道具」 - フェルドマン直伝!「掛け算」の知的生産術(プレジデント社 Pin-Point選書)
http://www.president.co.jp/book/item/322/7/



テレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」などでおなじみ、ロバート・フェルドマンさんの本。新書よりやや大きいくらいのミニ本で(850円)、どこからでも気軽に読める。

フェルドマンさんは、学生から「どうやったらアナリストになれますか?」という質問をよく受けるそうで、主にそういう人たちに向けて、以下の「7つ道具」を説く内容になっている。

1 混沌から意味を引き出す「分析力」
2 逆算して組み立てる「プレゼン力」
3 意見の違いを乗り越える「人間力」
4 下品になってはいけない「数字力」
5 見落としがちな「時間・エネルギー管理力」
6 "ハブ性"で勝負する「言語力」
7 自分ブランドで差別化する「商売力」

プレジデント社の紹介ページに詳しい目次が載っています)

これらの7つの力が「掛け算」で効いてくる、というのがこの本の趣旨になっている。

<どれか1つのスキルだけが特に大事ということはありません。アナリストとしての能力は、7つのスキルの複合効果で決まってくるのです。1つのスキルが弱くても、他の6つでカバーすればよい、というわけにはいかないのです。
 アナリストの能力は「足し算」ではなく「掛け算」で決まります。足し算なら1つがゼロでも他のスキルが高ければ補うことができますが、掛け算では一つがゼロなら、他がいくら高くても、全体ではゼロになってしまいます。
 この違いは、スキルの磨き方にも大きく影響します。
 スキルが足し算関係にあるなら得意科目を強化したほうが得策で、掛け算関係なら逆に苦手科目を強化することが得策になります>。

巻末の「私が読んできた本」「支えにしてきた言葉」も面白い。特に本のセレクションは、経済から数学、政治、心理、歴史、経営、文学まで幅広い分野から2~3冊ずつ選ばれていて、さりげない感じの紹介なのだが、これはかなり凝縮されたエッセンスなのだろうという迫力がある。

WBSでのフェルドマンさんの存在感・コメントぶりと同じく、ユーモラスかつさっぱりした感じで、しかし本質を遠慮なくズバズバ突くという、爽快な本になっている。フェルドマンさんの体験談や、面白いエピソードも満載。

異なる能力が「掛け算」で効いてくる、というこの本の考え方は、アナリストに限らず、複合的なスキルを求められる多くの知識労働者に参考になりそうだ。