2008.12.23
池田信夫こそ真のアルファブロガー
池田信夫ってそんなに変なことばかり言ってるか?
http://anond.hatelabo.jp/20081222195924

<経済学者でもBlogなら専門外のことでもどんどん好きなこと書きゃあいいと思うんだけどな。学術活動のつもりでやってるわけでもないでしょうに。Blogを楽しんでるよこの人。みんなはBlogを書くときに、自分の職業や学歴がどうだとか、そんなつまらないことが足かせになって執筆を躊躇するの?>

<書かなけりゃ弱点だって見抜かれないし、そりゃ「なんか偉い学者」のままだわな。間違いも弱点もさらけ出しつつ、それでも尚、強気で書き続けるからこの人は学者なんだよ>。

私もこの人の意見に賛成。

池田信夫氏のすごさは、中身のあるエントリを「高打率」で連発する強打者ぶりに加えて、「安全圏」から一歩踏み出して、リスクをとっているところだと思う。

中身のあるエントリを継続的に書いているブロガーはいくらでもいるが、自分の専門分野・得意分野から出ない場合が多いように思う。出たとしても、ふだんの専門的記述とははっきり区別した、あたりさわりのない日記的なものだったりする。

池田氏の場合、ほとんど何を書いても、一定の見識に裏打ちされた「オピニオン」になっていて、読ませる。「オピニオン」は主張を含んでいるから、議論や反発を呼ぶ場合ももちろんあるが、それは主張が中身を持っており、何らかの真実を突いていることの証拠でもある(中身のないものには、人間は反応しない)。そして池田氏のブログをしばらく継続して読んでいれば、その「オピニオン」が一貫性をもっており、「ブレない」ことがわかる。

幅広いテーマについて、リスクをとって「オピニオン」を書きつつも、その主張につねに一貫したものを感じさせ、かつ読んでいて面白い。こんなブログは、めったにないと思う(あと私に思いつく範囲では、dankogaiくらいか)。

「リスクテイカー」で「ジェネラリスト」というのは、日本では希少な人種だ。日本では、優秀な人はたいてい「スペシャリスト」で、あえて自分の専門分野から出るというリスクを犯さない。それは単に専門外のことに興味がないという場合もあるが、ほんとうは「オピニオン」があっても、間違いを恐れたり、意見対立を避けて、黙っているということも多い。まさに「空気を読む」わけだ。

池田信夫氏の強みは、いい意味で「大人げない」ところだと思う。つねにリスクを取って、自分のポジションを明確にしており、「しがらみ」みたいなものを感じさせない。「ウソ」がないのだ。これこそが「倫理」なのであって、私はこれゆえに、池田氏こそ真のアルファブロガーだと思うのである。

例えば最近のエントリ、「イノベーションは技術革新ではない」、「新たな「失われた10年」が始まる」、「「すり合わせ」の神話」などを読んでみてほしい。いずれも、経済、ビジネス、技術、政治といった複合的なテーマを含んでいるが、池田氏は専門知識と幅広い見識を基にして、じゅうぶん一般人でもわかる言葉で、一歩踏み込んだ「オピニオン」を書いている。これらはいずれも、米国の利下げやトヨタの赤字発表といった最新ニュースに呼応したかたちで書かれているわけで、こんなに充実した解説を毎日のように読めるなんて、これこそ「ブログ」というメディアの醍醐味だと思う。