2009.06.06
ガートナーの「ハイプ曲線」
英語のWikipediaに「ハイプ曲線(Hype cycle)」のページを見つけた。

Wikipedia - Hype cycle
http://en.wikipedia.org/wiki/Hype_cycle

「ハイプ曲線」は技術の成熟度や普及度の「盛衰」を表現した曲線で、IT調査会社のガートナーが作ったもの。技術は次の5つの段階を経るとされる。



1. Technology Trigger 「技術の引き金」

2. Peak of Inflated Expectations 「ふくらんだ期待の頂点」

3. Trough of Disillusionment 「幻滅の谷」

4. Slope of Enlightenment 「啓蒙の坂」

5. Plateau of Productivity 「生産性の高原」

(訳語は私によるもの)

いったん過剰に期待されて、その後は過剰に幻滅されるというサイクルが、経済のバブルにもそっくりだ。

個人的には、特に「幻滅の谷」「啓蒙の坂」あたりのフレーズが気にいっている。大作家の小説みたいでカッコいい。

2001年、当時ガートナー・ジャパンに在籍していた栗原潔氏が書いた「ハイプ曲線でITの先を読む」という記事では、このハイプ曲線を次の5段階として解説している。

1. 黎明期 : あるIT構成要素が世の中に登場すると,次第に期待度が上がっていく。

2. 流行期 : 多くのメディアやベンダーがそのIT構成要素の過剰宣伝を行なうようになると,世の中の期待は必要以上に高まってしまう。いわゆるバブル状態であり,そのテクノロジーがあたかも万能であるように感じたり,採用しないと世の中から遅れてしまうのではというような強迫観念を感じたりする時期。

3. 反動期 : 過剰な期待の反動。メディアにバッシング記事が登場する。

4. 回復期 : 世の中が冷静さを取り戻す。そのIT構成要素の適切な適用範囲,価値,限界を理解するようになっていく。

5. 安定期 : そのITは本来の価値に見合った地位を得る。

(「てにをは」などは一部変更した)

ハイプを生み出す3つの落とし穴(「適用範囲の拡大解釈」「適用可能時期の見誤り」「目的と手段の取り違え」)や、「セマンティック・ウェブ」「P2P」「エンタープライズ・ポータル」といった具体的な技術を各段階にあてはめての解説など、8年前の記事ながら、いま読んでも面白い内容になっている。

ITに対する「ハイプ曲線」的な見方を知っておくと、ビジネス・投資でも役に立ちそうだ。「幻滅の谷」の段階にある技術は、株などで言えば「売られすぎ」「安値で放置」の状態にある。実際は成熟しつつあるのに、見放された状態というのは、大きな参入チャンスになりうる。もちろん、その後「啓蒙の坂」の段階に進めるかどうかが肝心で、その見きわめが勝負どころだろう。


関連:
Wikipedia - Hype cycle
http://en.wikipedia.org/wiki/Hype_cycle
ITmedia - Gartner Column:第9回 ハイプ曲線でITの先を読む(2001.07.30)
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/0107/30/01073006.html
Gartner - understanding hype cycles
http://www.gartner.com/pages/story.php.id.8795.s.8.jsp

関連エントリ:
いまごろXSLTに目ざめる
http://mojix.org/2009/02/22/imagoro_xslt