2010.02.21
滞納されても追い出せない 借地借家法の「罪」
asahi.com - 借地立ち退き期限の直前、80代姉妹が自殺 大阪・大東(2010年2月20日12時22分)
http://www.asahi.com/national/update/0220/OSK201002200039.html

<20日午前6時50分ごろ、大阪府大東市中垣内7丁目の住宅の庭で人が焼けている、と付近の住民から110番通報があった。大阪府警四条畷署員が駆けつけたところ、2人の焼死体を発見した。同署は、この家に住んでいた80代の姉妹が焼身自殺を図ったとみて身元の確認を進めている。住宅は借地で、姉妹は22日を期限に立ち退きを求められていたという>。

<府警によると、住宅は木造平屋建てで、土地は近くの住人が所有し、姉妹が数十年にわたって借りていた。ここ10年以上、土地代を滞納していたとして、22日までに退去するよう土地所有者から求められていたという。同署は、近所の人から「姉妹の1人から『もう近々、出て行かなあかん』という話を聴いた」との証言があったとしている>。

<土地の所有者の家族によると、通路を造るため、道路に面している土地の一部を立ち退いてもらおうとしたら、拒否されたため、裁判を起こした。立ち退かなければ22日に裁判所が強制執行することになっていたという>。

痛ましい話ではあるが、この80代姉妹は<10年以上、土地代を滞納していた>とのことで、同情の余地なしだと思う。<数十年にわたって借りていた>そうだから、地代はおそらく大した額ではないだろう。支払い能力がないというよりも、意図的な踏み倒しに近かったのではないか。滞納しながら10年以上も住み続けるのは、並の神経ではない。

気の毒なのは、むしろ地主だろう。10年以上も滞納されて、ずっと悩まされたあげく、自殺されてしまったわけだ。そのうえ、「地主が立ち退きを要求したのが悪い」と責める人が必ずいるだろう。地主は何も悪くないのに、踏んだり蹴ったりだ。

滞納されても追い出せないという、これこそ借地借家法というおかしな法律の「罪」だろう。家賃を払えない人は「弱者」なんだから、大家という「強者」はそれくらいガマンしてやりなさい、というのが借地借家法である。

社会にセーフティネットは必要だが、その役割を、取引の相手方である民間人に強制するという仕組みはおかしい。借地借家法は解雇規制と同様、「強者の権利は守らない」という日本的な悪法である。こういう悪法の存在は、日本には「公正(フェア)」という理念がまだ根づいていないことを象徴している。


関連:
ウィキペディア - 借地借家法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%9F..

関連エントリ:
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http://mojix.org/2009/12/22/houmon_okotowari
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http://mojix.org/2009/04/02/chintai_hoshounin