2010.07.14
ポール・グレアム「財産を失う理由の大部分は浪費をしたからではなく、誤った投資をしたせいだ」
らいおんの隠れ家 - ポール・グレアム「時間とお金をなくすには」
http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20100707#1278512365

<私たちは1998年にベンチャーを売却し、急に大金持ちになった。そして私は、それまで考える必要がなかったことを考えることになった。お金を失わない方法だ。貧乏人が金持ちになれたのだから、逆だってありうる。だが私は、長年、貧乏人から金持ちになる道を研究していただけで、金持ちから貧乏人になる道については、まったく何も知らなかった。だから私は、貧乏にならないために、金持ちが貧乏人になる道のりを学ぶハメになった>。

<そこで私は、財産を失う方法に注目するようになった。もし私が子供のころ「金持ちが貧しくなったとしたらなぜ?」と聞かれたら、「無駄づかいをしたから」って答えただろう。本や映画ではよくそうなる。というのも、そのほうが貧乏になる方法として人目をひくからだ。だが実際には、財産を失う理由の大部分は浪費をしたからではなく、誤った投資をしたせいだ>。

<無意識に浪費するのは難しい。普通の感覚の人なら数万ドルを使ったら「あー、大金を使っちゃったなあ」と思わずにはいられないだろう。だがデリバティブに手を出し始めたら、一瞬で100万ドル(金額はいくらでも増やせる)を失うこともある>。

<ほとんどの人は、贅沢な品物に金を使うことには警戒するが、投資にはそれほど警戒しない。贅沢は自分への甘やかしに思える。相続や宝くじに当たったのでもない限り、とっくに「将来困ったことになる」と自分に言い聞かせているだろう。投資のときにはそのアラームが鳴らない。お金の無駄づかいじゃなく、ある資産を別の資産に移してるだけさ。それが高価なものを売りつける人が「これは投資です」と言う理由だ>。

ポール・グレアムのエッセイはいつも面白いが、これは特に面白い。

たしかに、金持ちが「浪費」で財産を失うというのはあまりなさそうだ。金持ちにもいろいろなタイプがいるだろうが、テレビのセレブ番組に出てくるような派手なタイプはおそらく少数派で、金持ちはむしろ「ケチ」なタイプが多いと思う。

いつも「浪費」するような人は、そもそも金持ちになれないだろう。金持ちになるためには、収入を多くするだけでなく、支出を少なくする必要がある。一般人から見ると、金持ちのほうが浪費しているようなイメージがあるが、実際はむしろ逆で、金持ちのほうが浪費せず、一般人のほうが浪費しがちではないだろうか。

しかし、「浪費」にうるさい金持ちでも、「投資」となるとガードがゆるみがちだ、というのがこのエッセイの要点だ。「浪費」は誰でも用心しているので、それで全財産を失うようなバカな真似はしない。しかし「投資」となると、警戒心がなくなってしまい(このエッセイでは「アラームが鳴らない」と表現している)、全財産を吹っ飛ばしてしまうようなことが起きる。

このポール・グレアムのエッセイとあわせて、これを読んでおくといいかもしれない。

暇人\(^o^)/速報 - 株で完全に人生終了した救いようのないカスの実話の面白さは異常
http://blog.livedoor.jp/himasoku123/archives/51514304.html

株やFXで財産を失った人の体験談に、多数リンクが張られている。特に、次のものはすごい。

35歳第二の人生頑張るぞ
http://copypa.blog99.fc2.com/?mode=m&no=2378

定期預金や退職金、自宅を担保に借りた資金などの合計2000万円が、たった2週間で吹き飛んでしまったようだ。実話であるという保証はないが、わりとリアリティがある内容だと思う。

この人を「バカな奴だ」と一蹴して終わりにするのはカンタンだ。しかし、35歳が自力で2000万円を用意できている時点で、少なくともこの人はあまり「浪費」をせず、コツコツお金を貯めていたであろうことが想像できる。2000万円では「金持ち」とは言えないが、それなりの財力だ。2000万円をコツコツ貯めた人をも狂わせてしまい、一瞬で全財産を失わせることがあるのが「投資」というものだろう。

この人は35歳なので、すべてを失っても、まだ再起できる余地がある。しかし、例えば40年間マジメに働いてきたサラリーマンが、退職金を「投資」に突っ込んで吹き飛ばしてしまったというような場合は、まさに悲惨だ。マジメに働いてきた人に限って、「投資」や「起業」にナイーブなために失敗する、というパターンはわりとありそうに思う。