2010.12.11
あいさつしないと入店できない駄菓子屋 こういう店はもっとあってもいい
少し前、asahi.comにこんな記事が出ていた。

asahi.com - 「あいさつがない人、入店お断り」小田原の駄菓子屋さん(2010年11月27日12時28分)
http://www.asahi.com/national/update/1127/TKY201011270107.html

<「ピュン、ピュン」と古めかしい電子音を出すテーブル型ゲーム機や、10円硬貨で遊べる「エレメカ」ゲーム機。流行した1970~80年代、ゲームセンターだけでなく駄菓子屋にもあった。神奈川県小田原市に、その当時と同様のゲーム機を置く駄菓子屋がある>。


レトロ感あふれる「懐かし横丁」の店内で、あいさつをして入店した子どもたちが駄菓子を選んでいた=小田原市板橋、水野義則撮影

<神奈川県小田原市。箱根登山鉄道箱根板橋駅から徒歩数分、国道1号沿いの駄菓子屋「懐かし横丁」。子どもたちが「こんにちは」と言いながら次々に訪れ、遊んでいく。全国のゲーム好きが集う「オフ会」の場としても知られる>。


あいさつできない人の入店を断る張り紙=小田原市板橋、水野義則撮影

<入り口付近には「あいさつできない人は入店お断り」などと書かれた紙が何枚も張られている。店長の島野篤一さん(42)の発案だ。無言で店に入る人を見つけると島野さんが「あいさつをしない人は店に入れません」と注意する。大人も子どももあわてて「こんにちは」と返す>。

これはおもしろい。こういう店はもっとあってもいいと思う。

市場取引というのは、双方が合意の上でおこなうものだから、店側が客を拒否することはあっていい。拒否する基準がよくわからないのであれば、客も怒るだろうが、この店の場合、「あいさつすること」という受け入れ基準がはっきりしている。それが飲めない客は最初から入店しなければいいのだから、まったく問題ない。

記事中には、こんな記述もある。

<10年ほど前に現在の場所に移転。大人も楽しめるようにと店内で軽食や酒なども出し始めた。だが、目を離したすきに貴重な収集品が紛失。万引き防止にと、客に「あいさつ」をしてもらうことにしたのが始まりだ。「何をいばっているのか」などと反発されたこともあるが、島野さんは「いつの時代もあいさつは基本。何より気持ちがいい」と言う>。

ここに出てくる、「何をいばっているのか」と反発するような客こそ、客なら何でも許されると思いあがっている人の典型だろう。いばっているのは、むしろこの客のほうである。

この店がイヤなら無理に入店しなくていいし、別の店に行けばいいのだから、この店がどんな入店基準を作ろうと勝手である。

逆にいえば、この店の店主は、こんなふうに一部の客に反発を買って、客を逃がすリスクを引き受けても、こうすることを選んでいるわけだ。

このような店の姿勢は、思いあがっていない普通の客の立場から見ると、「あの店はちゃんとポリシーを持ってやっていて、納得できる人とだけ取引している」というふうに、むしろプラス評価になる面のほうが大きいのではないだろうか。

店なんていくらでもあるのだから、こういうユニークな店のやりかたをわざわざ否定して、その存在を許さないような考え方は、なんとも全体主義的である。いろいろな店があっていいし、いろいろな店があったほうが、むしろ面白いではないか。

店はもっともっと、自由でユニークなものであっていい。その個性が、客を選ぶことにつながるのだとしても、それが説得力のあるポリシーや思いに支えられているのであれば、それはむしろ信頼につながると思う。


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