2010.03.14
日本は「消費者独裁国家」である
日本ではつねに「消費者が善」だ。

学校に文句を言う「モンスターペアレント」。
企業にわがままを言う「モンスター顧客」。
病院に世話をやかせる「モンスター患者」。

サービスを受ける消費者は「絶対善」であり、
サービスを提供する側は、そのコストとリスクをかぶる。

雇用であれば労働者が「善」、会社が「悪」。
賃貸住宅であれば借りる人が「善」、大家が「悪」。
日本ではいつも「弱者」が「善」で、「強者」は「悪」である。
「弱者」の権利は守られるが、「強者」の権利は守られない。

コストやリスクを負いたくない消費者は、つねに多数派である。
政治もマスコミも、この「モンスター消費者」には逆らえない。

消費者が「善」、その取引相手は「悪」、という論調をマスコミが作り、
それを政治が追認して、新しい規制、新しい役所ができていく。
最近では「こんにゃくゼリー」騒動が典型的だろう。
こういう騒動は、実は政府には「おいしい」。権限と予算を増やせるからだ。
そのかげで規制が増え、税金がまた使われていく。

いつも「悪役」にされ、規制され、コストとリスクを背負わされる側は、
疲弊し、バカらしくなって、商売をやめてしまう。
そして経済は沈んでいく。けっきょく、困るのは消費者なのだ。

これが、いまの日本の「構造」だと思う。
日本の「モンスター消費者」は自分勝手すぎて、リスクなしでリターンを要求している。
市場取引で交渉するなら問題ないが、政府を経由して合法的に「強制力」を行使している。
しかし、「タダメシ(フリーランチ)」はありえないのだ。
その「ツケ」が、いまの日本経済の惨状である。
「モンスター消費者」には、その「構造」がわからない。「政治が悪い」と思っているのだ。

福沢諭吉は『学問のすゝめ』で、「愚民の上に苛(から)き政府あり」と書いた。

西洋の諺に愚民の上に苛き政府ありとはこの事なり。こは政府の苛きにあらず、愚民の自ら招く災いなり。愚民の上に苛き政府あれば、良民の上には良き政府あるの理なり。故に今我日本國においても此人民ありて此政治あるなり>。

日本の政治がダメなのは、「愚民の自ら招く災い」なのだ。

マスコミも政治も、「消費者の独裁」には逆らえない。
消費者こそ、マスコミと政治の「スポンサー」だから、「消費者批判」はタブーなのだ。
よって「消費者」を批判できる自由な立場にあるのは、ネットのみである。

このブログで解雇規制について書くと、いつも賛否が分かれるが、反響が大きい。
賛否両論で反響が大きいのは、その議論が問題の核心を突いている証拠である。
この問題については、私のスタンスは一種の「消費者批判」なので、多くの人がマスコミで見慣れた「消費者擁護」と反対であり、いわば「常識」をひっくり返すものだ。それを新鮮な視点だと思う人もいるし、許せないと思う人もいる。
いずれにしても、「消費者批判」はマスコミには載らないので、この議論はネットでしか読めない「スペシャルな話題」だろう。


関連エントリ:
「下請け保護」は下請けの仕事を減らす 「弱者を救済するために、強者を規制する」という「間違った正義」
http://mojix.org/2009/10/17/sitauke_hogo
日本をダメにしたのは誰か
http://mojix.org/2009/05/15/nihon_dame
日本の医療分野に存在する悪循環 横山禎徳氏による指摘
http://mojix.org/2009/04/10/yokoyama_med_sys

Update(2010.3.18):
このエントリを補足する「労働者は「労働サービス」の提供者であり、その意味では「経営者」である」を書きました。