2010.03.13
日本で7年間働いた中国人が日本で学んだこと
中国の深センに暮らす武田千夏さんのブログで、おもしろいエピソードが紹介されている。

住めば都!中国ほどおもしろい国はない! - 日本で何を学んだか?
http://china.blog.smatch.jp/blog/2010/03/post-408f.html

日本で7年間働いた経験のある中国の人が、何を日本で学んだかという武田さんの質問に対して、次のように答えたとのこと。

「自分は中国にいたとき、自分の発言や行動を他人がどう思うか、なんてことは一度も考えたことがなかった。日本人がそれを一番に考えて行動していることを知って、自分をコントロールすることを学んだ」

この中国の人は、日本にはお金を稼ぐ目的で行ったのだが、お金はそれほど稼げなかった。しかし、仕事の効率や礼儀正しさなどを学んだという。

「じゃあさ、中国の若者が 「日本に留学したいんだけど」 ってあなたに相談してきたら、なんて答える?」

という武田さんの質問に対して、その中国の人はこう答えたそうだ。

「金を稼ぐためならやめておけ。でも、仕事の効率や人材/品質管理、勤勉さ、文明社会としての礼儀正しさを学ぶにはいい。そういう方面では、中国は日本に比べて遅れているから」

つまり、日本は「経済大国」としてのパワーは失いつつあるが、その仕事のていねいさや礼儀正しさ、いわば「社会資本」や「文化資本」の点では、まだ優位性があるということだろう。

このエピソードは、ちょうどChikirinさんが最新エントリで書いている話と重なる。

Chikirinの日記 - 市場の魅力 <質&量>
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100311

<日本の市場はアジアの人と企業にとって、特別な市場なのだ。アジアには、「日本で売れたら一人前」と信じる人がたくさんいる。彼らは日本が大好きで、彼らにとってはアメリカで売れるより日本で売れる方が遙かに“ステイタスが高い”>。

<これは利益の問題ではない。日本の消費者というのは、“世界一の目利き”だと思われている。“本物がわかる人達”“ものすごい厳しい目で商品をみる人達”“違いのわかる消費者だ”、と思われているからだ>。

<アメリカ人はでかければ買う、安ければ買う、と彼等は思っている。「でも、日本人は圧倒的な品質とクールさを備えた商品しか買ってくれない。」 だから、中国、台湾、韓国などの企業にとって「日本で売れた!」ということは、ものすごく誇らしいことなのだ>。

日本の消費者の「うるささ」が、日本市場を鍛えて、高い品質を生み出しているわけだ。

しかし同時に、その高い品質には「コスト」もかかっている。これまでの日本は、いわば「コストを考えずに」質を追求してきたところがあったと思う。これからは、コストやリソースが「有限」であることを意識しつつ、そのコストやリソースをどこに「投資」するのかを、戦略的に考えていく必要がある。

そのためには、日本の何が「強み」なのかを、あらためて自覚する必要がある。冒頭の中国の人の見方には、この点で耳を傾けるべきものが含まれていると思う。日本も中国も両方よく知っている人の意見だからだろう。


関連エントリ:
「日本が好きなガイジン」の視点を生かす
http://mojix.org/2008/12/13/gaijin_shiten_for_japan
ガイジンになりたい
http://mojix.org/2006/01/21/221537