2010.03.15
大学生の就職内定率は「景気の指数」であり、かつ大学生が増えつづけている限り下がるしかない
YOMIURI ONLINE - 大学生の「就業力」アップ、国が5年計画(2010年3月14日03時08分)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100314-OYT1T00007.htm

<大学生の就職内定率が就職氷河期以来の落ち込みを記録する中、文部科学省は、2014年度までの5年を大学生・大学院生の「就業力」向上の重点期間と位置づけ、大学の財政支援などに乗り出す。
 10年度予算案で、既存の補助金などと別枠で30億円を確保、公募により、インターンシップ(就業体験)を卒業単位に認定するなど積極的な指導を行う国公私立大130校に資金配分する。また、私大約500校に来年度まで就職相談員を配置、大学生らの就業危機脱出を支援する>。

<同省などが12日に発表した2月1日現在の大学生の就職内定率は80%(前年同期比6・3ポイント減)で、調査を始めた00年以降で過去最低。新卒で就職する学生の3割が3年以内に離職しているというデータもある。各大学は独自に指導を行っているが、個々の学生の個性や職業観を踏まえた職業教育を行う大学がある一方、「面接対策など小手先の指導にとどまる大学も多い」(文科省)という>。

またしても、「政府が権限と予算を増やす」手口である。「ポスドク採用で補助金」とまったく同じ話だ。

日本では、企業は正社員をほぼ解雇できないので、労働需要の「調整」を新卒採用の数でおこなうしかない。要するに、大学生の就職内定率は「景気の指数」に過ぎないのだ。

さらに、日本は大学進学率が年々上昇し、大学生自体が増えているから、企業の採用数が一定であれば、就職内定率は下がるに決まっている。

大学生の「就業力」なんて、ぜんぜん関係ないのだ。企業は「欲しい数だけ採る」のであって、絶対的な基準なんてほとんどない。文学賞みたいに「該当者なし」ということはないのだ。

文部科学省の賢い官僚は、そんなことは当然知っているだろう。それをわかった上で、「権限と予算を増やす」というおなじみの「政府のビジネスモデル」を遂行しているわけだ。不況で内定がむずかしくなっている不安につけこんだ、ほとんど「貧困ビジネス」である。

私は「とにかく官僚が悪い」という「官僚ワルモノ論」は嫌いで、場合によっては官僚を擁護するが、こういう典型的な「省益拡大」路線には断固反対する。国が破綻しかねないほど財政が悪化しているのに、いまだにこんなバラマキばかりやっている官僚は、恥を知るべきだ。国を潰すつもりか。


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