2011.03.25
野口悠紀雄「40A以上の基本料金を値上げすれば、自主的な節電と利用平準化が進むだろう」
あまりにも影響が大きい計画停電に対して、市場メカニズムを利用し、電気料金の値上げで対応すべき、という意見がある。私もこれに賛成だ。

計画停電は、電気という資源の配分を「計画」で決めるものだ。これは文字通り、一種の「計画経済」である。緊急時には仕方がないとしても、こういうやり方は中長期的には持たない。電気という資源が希少になっているのだから、その価格を上げるのが自然だ。

野口悠紀雄氏が、この方向の具体的な提言をおこなっている。

ダイヤモンド・オンライン - 野口悠紀雄 未曾有の大震災 日本はいかに対応すべきか
緊急提言2:基本料金の見直しで、節電と利用平準化を進めよう
http://diamond.jp/articles/-/11554

野口氏は、例えば「40A以上は5倍にする」という基本料金の引き上げをおこなうと、以下のような効果があるだろうと予想する。

<現在の契約が60Aだとすると、値上げ後は月額8190円になる。これを30Aに変更すれば819円で済むので、月7371円の節約になる(なお、東京電力のホームページによれば、「契約アンペア数の変更は無料」とされている)。したがって、現在40A以上の契約をしている家計のなかで、40A未満の契約に変更する家計が出てくるだろう>。

<契約アンペア数を30Aに変更すれば、現在は60Aまでは同時に使えるものが、30Aまでしか同時に使えなくなる。したがって、余計な電気器具を使わないような努力がなされるだろう>。

<また、電力使用を時間的に平準化する努力もなされるだろう。家庭の電気機器でアンペア数が大きいのは、エアコン(冷房が6.5A、暖房が7.5A)、ドライヤー(12A)、電子レンジ(15A)、炊飯器(14A)、アイロン(14A)などだ(http://www.tepco.co.jp/life/custom/q_and_a/komatta/breaker-j.html)。契約アンペア数を下げれば、これらを同時に使わないよう注意するようになるだろう。例えば、「炊飯器を使う場合にはアイロンを切る」といった具合である>。

<契約アンペア数の引き下げは、「使いすぎの警告が出やすくなる」という意味も持つ。したがって、社会全体の電力使用量の抑制に協力したいと考えている家計は、「基本料金を節約できる」という効果よりは、「節電が進む」という効果を重視して、契約アンペア数を引き下げるかもしれない>。

これはいわば、家庭でできる「総量規制」だろう。ドライヤーや電子レンジを使うときは、エアコンを切る、みたいな行動を、マメにやるようになるわけだ。

こうした行動が、単に心がけのレベルでなく、実際に利用料金に反映するのだから、熱心にやる人が増えるだろう。

電気は基本的なインフラなので、もし一律に値上げすると、収入の比較的少ない世帯には打撃が大きそうだ。その点、この「40A以上は5倍にする」といったプランであれば、30A以下の契約である限り値上げはない。よほど電気を使っている家庭を除いて、大半の家庭は努力すれば30Aの契約で収められるだろうから、なかなかいいやり方だと思う。

このような値上げが東京電力だけでできるのか、政府の同意が必要なのかわからないが、夏が近づいてきて電力需要がさらに増える前に、ぜひ早急に導入してほしい。