2012.07.29
音楽は進化しているのか、退化しているのか
AFPBB News - ポップ音楽はここ50年で「よりうるさく、単純に」、論文(2012年07月28日 13:56)
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2891803/9299896

<英科学誌ネイチャー(Nature)系列のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に26日付で掲載された研究では、1955年から2010年までに世界中で作られたロック、ポップ、ヒップホップ、メタル、エレクトロニックなどさまざまなジャンルの音楽から選んだ50万近くの曲をコンピューターで分析した。その結果、音量レベルが常に上がり続けている一方で、コード進行やメロディーの多様性は過去50年間で一貫して減少を続けていたという>。

これはおもしろい話。ここ50年間の音楽の傾向として、「音量レベル」は上がって、「コード進行」「メロディー」は単純になっている、とのこと。

この結果自体には異論はないが、しかし研究の対象から「リズム」が抜けているらしいのが気になる。ジャズ以降の音楽でもっとも進化している要素は「リズム」だろう。

音楽というものにおいて、リズムの比重が上がり、そこが進化してきた。いっぽう、コード進行やメロディー、ハーモニーの比重は下がり、その面では退化している。私はそのように捉えている。

リズムをもっと重視するような研究をおこなえば、音楽は大きく進化している、という結論になるかもしれない。

音楽の進化というテーマについては、以前このように書いたことがある。

音楽の「不良化」
http://mojix.org/2010/12/28/ongaku-furyou

<音楽の歴史とは、このような「不良化」の歴史なのではないか。「不良」、つまり「新しくて乱暴なもの」が出てきて、それ以前の「古き良きもの」を否定し、打ち壊していく>。

<音楽に限らず、おそらく歴史そのものが、このような「不良化」のプロセスなのだという気がする。「最近の若い奴はダメだ」といった嘆きは、古代から存在していたという。「最近の若い奴」つまり「不良」が、旧世代の良いところも悪いところも含めて、すべてを否定していく。その乱暴な否定により、一部は進歩するのだが、一部はむしろ退化してしまうのだ>。

<歴史という「不良化」のプロセスを通じて、人間のある部分は賢くなり、ある部分は愚かになる>。

このような「不良化」のプロセスによって、音楽では「リズム」は進化したが、「メロディー」や「ハーモニー」は退化した、ということではないだろうか。

また、より根本的な問題として、そもそも音楽にとって「単純さ」はけっして悪ではない、ということもある。単純すぎるのもつまらないが、複雑であればいいというものでもない。良い音楽は、単純さと複雑さのあいだにある。


関連エントリ:
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http://mojix.org/2010/12/28/ongaku-furyou
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