2012.08.26
アルツハイマー患者用の「バス停」
The International Association of Chiefs of Police - Fake Bus Stops For Alzheimer’s patients in Germany(2011/11/18)
http://www.theiacp.org/About/Governance/Divisions/Sta..



ドイツの老人ホームでは、アルツハイマー患者である入居者の徘徊対策として、近くにニセの「バス停」を置く、というアイディアが広まりつつあるとのこと。

ニセの「バス停」は、バス事業者との協力により、本物のバス停とまったく同じように作られている。違いはただひとつ、そこにバスは来ないということだ。

入居者はしばしば、もう存在しない自宅や家族のもとに帰ろうとして、どこか遠くへ行ってしまうという。ニセの「バス停」ができる前までは、こうして入居者が行方不明になるたびに、老人ホームは入居者をとりもどすため、警察の世話にならなければならなかった。

老人ホームのスタッフは、この経験を繰り返すうち、徘徊する入居者は公共交通機関を使うことに着目し、ニセの「バス停」を思いついたそうだ。

入居者はしばしば、「自分の子供が家で待っているので、急いで帰らなきゃ」といった考えにとらわれて、施設を出ようとする。従来なら、スタッフがこれを食い止める必要があった。しかし、いまはニセの「バス停」があるので、「あそこにバス停がありますよ」と導くことができるという。すると入居者は、しばらく「バス停」で待っているうちに、気持ちが落ち着くそうだ。入居者が5分ほどそこで待っているのを見て、スタッフが「バスは遅れているようなので、中で待ちましょう」などと声をかけ、施設に戻す。すると、入居者はアルツハイマーで短期記憶が弱っているので、自分が出かけようとしていたことも忘れるという。

ニセの「バス停」で騙すのは、ちょっとかわいそうな気もする。しかし、外へ出れないように閉じ込めてしまうよりは、たしかにこのほうが、入居者を人間として尊重している。「外へ出たい」という思いを、ひとまず実現させてあげて、バス停に導く。少しのあいだバス停で待っているうちに、「これで家へ帰れる」と思い、気持ちが落ち着く。そこで声をかけ、「中で待ちましょう」と施設に戻す。ひとつひとつのステップを、強制でなく、本人が納得できるように進めている。できるだけ強制せず、本人の意思で行動させることで、人間の尊厳を守っているのだ。


ネタ元:
Hacker News - Fake Bus Stops For Alzheimer’s patients in Germany (2011) (theiacp.org)
http://news.ycombinator.com/item?id=4426014

Update (2012/8/27):
アルツハイマー患者用の「バス停」:補足」を書きました。