2013.03.04
「動物ではない犬」は想像すらできない
「太陽は東からのぼる」という文は、総合的(synthetic)な命題である。つまり、そこに含まれている語の意味だけでは文の真偽が判定できず、世界の観察を必要とする。「太陽は東からのぼる」は総合的に真な命題であり、必然ではない。よって、「太陽は東からのぼる」が成り立たない世界を想像できる。

いっぽう、「犬は動物である」という文は、分析的(analytic)な命題である。つまり、そこに含まれている語の意味だけで文の真偽が判定できて、世界の観察を必要としない。「犬は動物である」は分析的に真な命題であり、必然的に成り立つ。よって、「犬は動物である」が成り立たない世界は想像すらできない。

「東ではない方向からのぼる太陽」は、概念レベルで矛盾してはいないので、想像ができる。しかし「動物でない犬」は、概念レベルで矛盾しているので、想像すらできないのだ。

分析哲学では、想像できる世界のことを「可能世界」と呼ぶ。語の意味だけで真になる分析命題は、あらゆる可能世界で成り立つ。分析命題の真偽は、わたしたちの現実世界には一切依存していないからだ。


関連:
Wikipedia - Analytic–synthetic distinction
http://en.wikipedia.org/wiki/Analytic%E2%80%93synthetic_distinction

関連エントリ:
数学は科学か
http://mojix.org/2013/03/03/suugaku-kagaku
数学と科学の違い
http://mojix.org/2008/05/07/math_and_science