2005.08.10
日本のブログ界にも政治ブームか / ホリエモンと小泉純一郎 / 政治広報戦略も「マス」から「バズ」へ
おとといの郵政民営化法案否決・衆院解散を受けて、ブログでもこの話題が増えてきた。日本のブロガーがここまで政治を話題にしているのは、初めて見る気がする。

この感じは、ライブドア・フジ騒動のときの盛り上がりと似ていると思う。あのときは、ビジネスや経済に強い人やまさに本職の人が、マスメディアよりも早く、充実した解説をどんどん書いて、多くの人がそれを熱心に読んだ。

今回の解散総選挙でも、それと似たような盛り上がりが起きつつあると感じる。これまでであれば、テレビや新聞などのマスコミが主な情報源だったが、今回はそこにブログも有力な情報源として加わってきた。

解散総選挙へ至る経緯もなかなか劇的なものがあったし、ライブドア騒動でホリエモンがいたように、今回も小泉純一郎という役者がいる。保守層に反旗をひるがえし、反感を買う強気発言もするが、筋は通っており、ドン・キホーテ的に突き進むというところで、この2人は案外似ている気もする。

個人ブログで今回の解散総選挙を話題にしているものの例として、いくつか拾ってみる(選択には特に意味はなく、私の目についたものです)。

Irregular Expression : 郵政解散-小泉総理記者会見全文
http://www.wafu.ne.jp/~gori/diary3/200508090117.html

時事を考える : 自民党ベッタリの日経に騙されるな(郵政解散ではない)
http://jmseul.cocolog-nifty.com/jiji/2005/08/post_7140.html

極東ブログ : [書評]自民党の研究(栗本慎一郎)
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/08/post_e56b.html

R30 : 郵政解散は「叡山焼き討ち解散」か?
http://shinta.tea-nifty.com/nikki/2005/08/yusei_a999.html

切込隊長BLOG(ブログ) : 小泉首相「郵政解散」+日銀「量的緩和策継続観測」で日経100円上げ
http://column.chbox.jp/home/kiri/archives/blog/main/2005/08/09_123424.html

Espresso Diary@信州松本 : 衆議院解散。
http://blog.livedoor.jp/takahashikamekichi/archives/29930122.html

ロンドン投資銀行日記 : 衆議院解散の意味
http://londonib.exblog.jp/1502871

人によって意見やスタンスが違うのは当然なわけだが、これらの人たちはいつも書いている自分のブログで、「署名入り」で意見を述べている。なんといっても、そこがいいと思うのだ。その人がこれまで書いてきたブログをある程度通して読めば、その人の「立ち位置」もわかる。

政党やマスコミなどが発する見解は、その「団体としての見解」であるのに対し、ブログは基本的に「個人としての見解」だ。団体の見解は、単にそこに属する多数の個人の見解がまとめられているだけでなく、団体には通常スポンサーみたいな存在があるために、その見解は多かれ少なかれ、そのスポンサーの利害とも連動せざるをえない。これに対して個人は、あくまでもその人の見解であって、それがスポンサーに左右されるということは少ない。

「集団は個人よりも愚かだ」と言ったのはたしかノーバート・ウィーナーだったと思うが、そのような意味で、団体よりも個人ブロガーの意見のほうが「純度が高い」気がするのだ。

これからの政治家は、テレビでしゃべったり、街頭で演説するだけでなく、自分でもブログを書き(すでに書いている人もたくさんいるが)、みずからブロガーになりつつ、他のブロガーとコミュニケーションすることが、重要な活動になってくる気がする。まともな議論ができるか試されるというだけでなく、そこで筋の通った議論ができれば、共感や尊敬を集め、一気に支持を広めることもできるだろう。

これを政治の「広報戦略」と考えれば、いきなりお茶の間の全国民に訴えるという従来型の手法は「マス」マーケティングに近く、ブログなどを駆使して、まずはブロガーやオピニオンリーダーにアピールする手法は、「バズ(buzz)」マーケティングに近い、と言えるかもしれない。マス型はどうしても中身が薄くなる(情に訴える、とにかく名前を連呼して覚えさせる、など)ので、バズ型のほうが中身のある広報活動ができるはずだ。

そこまで行くにはもう少し時間がかかりそうだが(もちろん、すでにブログを書いている政治家がいないわけではない)、ひとまず個人ブログでこれだけ政治が語られはじめただけでも、大きな前進だと思う。

My Life Between Silicon Valley and Japan : 総選挙とBlog
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050809/p1

<衆院解散以来の日本のBlog世界を眺めていて思う。いくら英語圏に比べて趣味的な内容が多いと言われる日本のBlog世界も、さすがに「十年に一度」の意味を持つ総選挙となるとかなり動きそうな予感。今度の総選挙は、日本で初めてネットの影響が真に現れた総選挙として記憶されることになるだろう>。

まったく同感。今回の総選挙は、この日本で「ブログが政治を動かす」最初の事例になるかもしれない。

ITmedia : ブログが見た「否決・解散・総選挙」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0508/09/news043.html

<8月8日午後の衆議院解散を契機に、ブログ界で総選挙に関する話題が盛り上がっている。テクノラティジャパンのブログ検索サイト「Technorati.jp」は、選挙に関するキーワードを含むブログを集める特集を開始。はてなダイアリーでは、関連のキーワードの言及数が跳ね上がった>。

さっそく特集を組んだテクノラティは、さすがタイムリーな動きだと思う。「ブログと政治」という点ではアメリカが断然進んでいるので、テクノラティはその経験やノウハウを日本に持ち込む「輸入業者」として、ベストポジションにいるということだろう。

いまや大人気の「はてなブックマーク」でも、解散総選挙ネタが注目エントリにいくつもランクインしており(上にピックアップしたものも、ここから知ったものが多い)、しばらく目が離せない。