穴を使って「属性検索」する昔のカード技術 「Edge-notched card」
Kevin Kelly(ケビン・ケリー)が、昔のカード技術について書いている。
Kevin Kelly - One Dead Media
http://www.kk.org/thetechnium/archives/2008/06/one_dead_media.php
Alex WrightがNew York Timesに書いたPaul Otlet(ポール・オトレ)についての記事に触れながら、「Edge-notched card」というものを紹介している。
Wikipedia - Edge-notched card
http://en.wikipedia.org/wiki/Edge-notched_card
「Edge-notched card」(以下「ノッチカード」と表記)とは、上の写真のようにカードの端に穴があいたものを使って、この穴の一部をV字型に切り落とすことで、カードの分類を可能にした技術のようだ。
以下の写真のように、昔の駅員がキップを切るのに使っていたパンチみたいなもので、穴の一部を切り落とす。このひとつひとつの穴が「フラグ」(オン・オフ)になるので、穴をどう切り落とすかで、たくさんの属性を表現できる、という仕組みだ。
ノッチカードとして出回った商品では、「McBee card」というものが有名だったらしい。
このノッチカードの穴は、そのカードの属性をただ記録・表現しているだけではない。カードをたくさん重ねて、細長いキリのようなものを穴に通すことで、その穴があいているものとあいていないものを分離できるのだ。
例えば、このカードシステムを顧客管理に使うとする。顧客の属性に「都道府県」があるとすると、都道府県は47で、2の6乗(64)で収まるので、6つの穴で表現できる。
このカードの束から「愛知県」の顧客を抜き出したければ、「愛知県」の穴のパターンを確認しておいて、細長いキリを穴に通して持ち上げるという「分離」を最大6回やれば、都道府県の属性値が「愛知県」のカードを抽出できるわけだ(キリを複数使えば、もっと早い)。
ケビン・ケリーは冒頭の記事で、こう書いている。
<These cards were used by Stewart Brand in managing the creation of the Last Whole Earth Catalog in 1975, which is where I first encountered them>.
(大意:スチュアート・ブランドは1975年、『Whole Earth Catalog』の最終号を作るのに、このカードを使っていた。私がそのカードを見たのは、それが初めてだった)
これに続けて、このカードシステムをスチュアート・ブランド自身が紹介した言葉も引用されている(「ファンキーで機能的だ」などと書いている)。「Whole Earth Catalog」で紹介するたくさんのアイテムや本、作業メモ、雑誌の購読者などは、このカードシステムで管理されていたらしい。上の写真は、この引用の直後に置かれているので、どうやらその現物みたいだ。
ウィキペディアの解説には、このノッチカードが誕生したのは1896年で、20世紀を通じて使われたとある。まさにポール・オトレの時代に生まれ、スチュアート・ブランドの『Whole Earth Catalog』最終号(1975)にまで使われてきたわけだ。
このカード技術はおそらく日本にも入ってきていただろうし、図書館などでは使われていたものと思うが、私が少し調べた範囲では、うまく見つけられなかった。いい情報が見つかったら、あらためて書いてみたい。
私はこういう「IT・ウェブの先駆」っぽい話、アナログ技術が大好きだ。それが好きなのは、懐古趣味や歴史的な興味というよりも、その道具を通じて、当時の人の「思い」や「喜び」が伝わってくるような、そんな気がするからだ。
手段が制限されているからこそ、のびのびした「想像力」がそこに備わっているように思える。
関連:
Wikipedia - Paul Otlet (1868-1944)
http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Otlet
YouTube - Paul Otlet, visioning a web in 1934
http://jp.youtube.com/watch?v=hSyfZkVgasI
Wikipedia - Whole Earth Catalog
http://en.wikipedia.org/wiki/Whole_Earth_Catalog
aki's STOCKTAKING - 'Stay hungry. Stay foolish.'
http://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000879.html
関連エントリ:
ポール・オトレ、オットー・ノイラート、ル・コルビュジエをつなぐ大田暁雄
http://mojix.org/2008/03/19/otlet-neurath-corbusier-ota
ジョブズのスピーチで言及されていた 『The Whole Earth Catalog』 最終号の裏表紙
http://mojix.org/2005/08/02/170306
Kevin Kelly - One Dead Media
http://www.kk.org/thetechnium/archives/2008/06/one_dead_media.php
Alex WrightがNew York Timesに書いたPaul Otlet(ポール・オトレ)についての記事に触れながら、「Edge-notched card」というものを紹介している。
Wikipedia - Edge-notched card
http://en.wikipedia.org/wiki/Edge-notched_card
「Edge-notched card」(以下「ノッチカード」と表記)とは、上の写真のようにカードの端に穴があいたものを使って、この穴の一部をV字型に切り落とすことで、カードの分類を可能にした技術のようだ。
以下の写真のように、昔の駅員がキップを切るのに使っていたパンチみたいなもので、穴の一部を切り落とす。このひとつひとつの穴が「フラグ」(オン・オフ)になるので、穴をどう切り落とすかで、たくさんの属性を表現できる、という仕組みだ。
ノッチカードとして出回った商品では、「McBee card」というものが有名だったらしい。
このノッチカードの穴は、そのカードの属性をただ記録・表現しているだけではない。カードをたくさん重ねて、細長いキリのようなものを穴に通すことで、その穴があいているものとあいていないものを分離できるのだ。
例えば、このカードシステムを顧客管理に使うとする。顧客の属性に「都道府県」があるとすると、都道府県は47で、2の6乗(64)で収まるので、6つの穴で表現できる。
このカードの束から「愛知県」の顧客を抜き出したければ、「愛知県」の穴のパターンを確認しておいて、細長いキリを穴に通して持ち上げるという「分離」を最大6回やれば、都道府県の属性値が「愛知県」のカードを抽出できるわけだ(キリを複数使えば、もっと早い)。
ケビン・ケリーは冒頭の記事で、こう書いている。
<These cards were used by Stewart Brand in managing the creation of the Last Whole Earth Catalog in 1975, which is where I first encountered them>.
(大意:スチュアート・ブランドは1975年、『Whole Earth Catalog』の最終号を作るのに、このカードを使っていた。私がそのカードを見たのは、それが初めてだった)
これに続けて、このカードシステムをスチュアート・ブランド自身が紹介した言葉も引用されている(「ファンキーで機能的だ」などと書いている)。「Whole Earth Catalog」で紹介するたくさんのアイテムや本、作業メモ、雑誌の購読者などは、このカードシステムで管理されていたらしい。上の写真は、この引用の直後に置かれているので、どうやらその現物みたいだ。
ウィキペディアの解説には、このノッチカードが誕生したのは1896年で、20世紀を通じて使われたとある。まさにポール・オトレの時代に生まれ、スチュアート・ブランドの『Whole Earth Catalog』最終号(1975)にまで使われてきたわけだ。
このカード技術はおそらく日本にも入ってきていただろうし、図書館などでは使われていたものと思うが、私が少し調べた範囲では、うまく見つけられなかった。いい情報が見つかったら、あらためて書いてみたい。
私はこういう「IT・ウェブの先駆」っぽい話、アナログ技術が大好きだ。それが好きなのは、懐古趣味や歴史的な興味というよりも、その道具を通じて、当時の人の「思い」や「喜び」が伝わってくるような、そんな気がするからだ。
手段が制限されているからこそ、のびのびした「想像力」がそこに備わっているように思える。
関連:
Wikipedia - Paul Otlet (1868-1944)
http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Otlet
YouTube - Paul Otlet, visioning a web in 1934
http://jp.youtube.com/watch?v=hSyfZkVgasI
Wikipedia - Whole Earth Catalog
http://en.wikipedia.org/wiki/Whole_Earth_Catalog
aki's STOCKTAKING - 'Stay hungry. Stay foolish.'
http://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000879.html
関連エントリ:
ポール・オトレ、オットー・ノイラート、ル・コルビュジエをつなぐ大田暁雄
http://mojix.org/2008/03/19/otlet-neurath-corbusier-ota
ジョブズのスピーチで言及されていた 『The Whole Earth Catalog』 最終号の裏表紙
http://mojix.org/2005/08/02/170306