2008.09.13
「バーチャル」とはなんなのか
実際の物理的な世界に対し、コンピュータやネットワーク上の世界はよく「バーチャル(virtual)」と言われる。この「バーチャル」とはなんなのか。

私は、コンピュータやネットワークというのは「新しい紙」にすぎないと考えている。昔からあった「紙」と、原理的には何も変わらない。

ネットを見るのと、本を読むのは、ほとんど同じことだと思う。コンピュータやネットワークが「バーチャル」なら、本や雑誌も「バーチャル」だ。

そこには「情報がのっている」。要するに「メディア」だ。「バーチャル」とは、「メディア」なのだ。

「メディア」とは、「情報がのっているもの」だ。そして「情報」とはつまるところ、「記号」である。

「記号」とは、「それ自身以外のものを指示・意味する配置」だ。「北海道」という記号を見ると、わたしたちは北海道を想起する。記号とはこのように、それを見たり聞いたりしたときに、それ以外のものを想起するようにできている。

「バーチャル」とは結局のところ、この「記号」の性質そのものなのだ。「北海道」という記号が北海道のことを指示・意味しており、その記号を見てわたしたちが北海道を想起するということ、これが「バーチャル」だ。

「北海道」という記号は、実際の北海道に似ていないので、あまり「バーチャル」とは思えないかもしれない。しかし、「北海道」という記号でなく、北海道の絵だったり、北海道の写真だったりすれば、より「バーチャル」な感じが強まる。

「北海道」という語と、北海道の絵や写真では、記号としての性質が異なるが、いずれも記号であり、「それ自身以外のものを指示・意味する配置」である点は同じだ。

写真というメディアがはじめて登場したとき、それを初めて見た人間は「まるで現実みたいだ」と思ったはずだ。同じように、映画というメディアを初めて見たときも、「まるで現実みたいだ」だと思ったはずだ。あたらしいメディアが出るたびに、人間は「まるで現実みたいだ」という驚きの声を上げるが、これらはすべて「記号」や「メディア」が進化したものにすぎない。

何かを記録したり、表現・伝達したりするとき、人間は必ず文字や絵を使う。太古の昔、人間が岩や地面に動物を描いたときから、「バーチャル」は始まっていた。人類の記号の歴史とともに、「バーチャル」は形を変えながら、つねに存在してきたのだ。

関連:
ウィキペディア - 記号
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%98%E5%8F%B7
ウィキペディア - バーチャルリアリティ 「仮想現実」という訳語について
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90...
Wikipedia - Virtual
http://en.wikipedia.org/wiki/Virtual

関連エントリ:
現実仮想空間
http://mojix.org/2004/02/20/073257