リーマンを救済しなかった米政府の判断は正しい
リーマン・ブラザーズ破綻で、米国株はダウが504ドル下げた。これは2001年9月11日の同時多発テロのとき以来の下げ幅だという(「ロイター - 米株急落、リーマン破たんやAIGめぐる懸念で」)。
日本株も午前10時現在、日経平均が600円近く下げている。これほどの下げはちょっと久しぶりだ。
asahi.com - 米財務長官「リーマン救済は一度も考えず」(2008年9月16日8時19分)
http://www.asahi.com/business/update/0916/JJT200809160006.html
<ポールソン米財務長官は15日、ブッシュ大統領に証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)などを報告した。記者会見した財務長官は、公的資金投入による救済は「一度たりとも考えなかった」と説明した。
ただ民間金融機関の救済はもうないのかとの問いには、「税金投入を軽く考えてはいない」とする一方で、「『2度とない』とは取らないでほしい。金融システムの安定は重要だ」とも述べ、今後については含みを残した。(時事)>
リーマンを公的資金で救わない、と決めたこの米政府の判断については、「田中宇の国際ニュース解説」に比較的詳しい経緯が解説されている(ちなみに私は特に田中氏のファンというわけではないが、この経緯解説の部分は有意義だと思うので紹介する)。
田中宇の国際ニュース解説 - リーマンの破綻、米金融の崩壊
http://tanakanews.com/080915Lehman.htm
<そして9月13日からの今週末、ニューヨークの連銀ビルでは、ゴールドマンサックス出身のポールソン財務長官らが仲裁し、米の主要な金融機関の経営者たちが集まって、土日をかけてリーマン救済案について協議した。救済案の一つは、大手の商業銀行(仲介専業の投資銀行と異なり、預金を集めて投資する一般銀行)であるバンクオブアメリカ(バンカメ)と、イギリスの大手銀行バークレイズが、リーマンを買収する案だった(関連記事)>。
<バンカメとバークレイズは、自分たちも金融危機で弱体化しているため、当局が支援融資をしてくれない限り、不良債権を抱えるリーマンを買収できないと主張し、米当局に公金注入を求めた。しかしポールソンは、公金注入は金融の自己責任原則を崩し「モラルハザード(倫理崩壊)」につながるとして断固拒否した。バンカメとバークレイズは14日午後、相次いで買収交渉から離脱した(関連記事)>。
<今年3月、投資銀行のベアースターンズがJPモルガンチェースによって救済買収された際には、米当局はJPモルガンに300億ドルの救済融資をしている。このとき米政府が救済融資した理由は、ベアスタは巨額のCDS(債券倒産保険)を抱え、そのまま倒産すると62兆ドルのCDS市場がシステム的に全崩壊しかねないからだった(関連記事)>。
<リーマンは、ベアスタよりも巨額のCDSを抱えており、3月の基準を適用するなら、当局の救済融資を受ける資格があった。しかしポールソンは、3月の危機は突然だったが、今回の危機はそれから半年たっており、リーマンには十分な対応期間があったとして、前回同様の救済金の支出を拒否した>。
3月のベアー・スターンズの際は救済したが、今回のリーマンは救済しないと決めたこのポールソンの判断は、私は正しいように思う。一時的に大騒ぎになるし、信用収縮が起きるかもしれないが、長い目で見れば、原則やモラルをきちんと守っておいたほうが、底を打って回復するのも早い。
金融システムへの信頼は、その通貨や国への信頼に直結している。<公金注入は金融の自己責任原則を崩し「モラルハザード(倫理崩壊)」につながる>というポールソンの言葉は、かつて竹中金融相が言った「大きすぎて潰せない銀行はない」という言葉を思い出させる。これは一見厳しい言葉だし、パニックを引き起こすリスクもあるが、モラルを守ることを明言し、政府や通貨への信頼という最も大事なものを守る意味がある。
アメリカは当面つらい状況が続くだろうし、サブプライムも自らまいた種であって自業自得だが、バーナンキやポールソンの舵取りはわりと明確な感じがする。かつての日本のようにダラダラ不況が続くのではなく、米経済は1~2年くらいで回復してくるかもしれない。
日本株も午前10時現在、日経平均が600円近く下げている。これほどの下げはちょっと久しぶりだ。
asahi.com - 米財務長官「リーマン救済は一度も考えず」(2008年9月16日8時19分)
http://www.asahi.com/business/update/0916/JJT200809160006.html
<ポールソン米財務長官は15日、ブッシュ大統領に証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)などを報告した。記者会見した財務長官は、公的資金投入による救済は「一度たりとも考えなかった」と説明した。
ただ民間金融機関の救済はもうないのかとの問いには、「税金投入を軽く考えてはいない」とする一方で、「『2度とない』とは取らないでほしい。金融システムの安定は重要だ」とも述べ、今後については含みを残した。(時事)>
リーマンを公的資金で救わない、と決めたこの米政府の判断については、「田中宇の国際ニュース解説」に比較的詳しい経緯が解説されている(ちなみに私は特に田中氏のファンというわけではないが、この経緯解説の部分は有意義だと思うので紹介する)。
田中宇の国際ニュース解説 - リーマンの破綻、米金融の崩壊
http://tanakanews.com/080915Lehman.htm
<そして9月13日からの今週末、ニューヨークの連銀ビルでは、ゴールドマンサックス出身のポールソン財務長官らが仲裁し、米の主要な金融機関の経営者たちが集まって、土日をかけてリーマン救済案について協議した。救済案の一つは、大手の商業銀行(仲介専業の投資銀行と異なり、預金を集めて投資する一般銀行)であるバンクオブアメリカ(バンカメ)と、イギリスの大手銀行バークレイズが、リーマンを買収する案だった(関連記事)>。
<バンカメとバークレイズは、自分たちも金融危機で弱体化しているため、当局が支援融資をしてくれない限り、不良債権を抱えるリーマンを買収できないと主張し、米当局に公金注入を求めた。しかしポールソンは、公金注入は金融の自己責任原則を崩し「モラルハザード(倫理崩壊)」につながるとして断固拒否した。バンカメとバークレイズは14日午後、相次いで買収交渉から離脱した(関連記事)>。
<今年3月、投資銀行のベアースターンズがJPモルガンチェースによって救済買収された際には、米当局はJPモルガンに300億ドルの救済融資をしている。このとき米政府が救済融資した理由は、ベアスタは巨額のCDS(債券倒産保険)を抱え、そのまま倒産すると62兆ドルのCDS市場がシステム的に全崩壊しかねないからだった(関連記事)>。
<リーマンは、ベアスタよりも巨額のCDSを抱えており、3月の基準を適用するなら、当局の救済融資を受ける資格があった。しかしポールソンは、3月の危機は突然だったが、今回の危機はそれから半年たっており、リーマンには十分な対応期間があったとして、前回同様の救済金の支出を拒否した>。
3月のベアー・スターンズの際は救済したが、今回のリーマンは救済しないと決めたこのポールソンの判断は、私は正しいように思う。一時的に大騒ぎになるし、信用収縮が起きるかもしれないが、長い目で見れば、原則やモラルをきちんと守っておいたほうが、底を打って回復するのも早い。
金融システムへの信頼は、その通貨や国への信頼に直結している。<公金注入は金融の自己責任原則を崩し「モラルハザード(倫理崩壊)」につながる>というポールソンの言葉は、かつて竹中金融相が言った「大きすぎて潰せない銀行はない」という言葉を思い出させる。これは一見厳しい言葉だし、パニックを引き起こすリスクもあるが、モラルを守ることを明言し、政府や通貨への信頼という最も大事なものを守る意味がある。
アメリカは当面つらい状況が続くだろうし、サブプライムも自らまいた種であって自業自得だが、バーナンキやポールソンの舵取りはわりと明確な感じがする。かつての日本のようにダラダラ不況が続くのではなく、米経済は1~2年くらいで回復してくるかもしれない。