2009.01.07
企業による「搾取」は可能なのか?
企業による「搾取」という表現をよく見かける。過酷な労働条件に対する比喩であれば理解できるが、真の意味での「搾取」が、企業に可能だろうか?

企業と社員の雇用契約は、両者の合意・自由意志に基づく契約だ。「強制的に働かされる」ことはありえない。

労働があまりにも過酷で、それに対して自分の給料が安すぎると考えるなら、辞めて別の会社に移ったり、独立すればいい。

もし他の仕事を見つけられず、独立もできないとすれば、

1)「自分の労働」というサービスに競争力がない
2)労働市場が不完全で、雇用の流動性や需要が不足している(雇用規制や最低賃金法などによる)

のいずれかだろう。1)ならば自分のせいだし、2)ならば政府のせいだ。いずれにしても、企業のせいではない。

企業は市場で労働力や原材料を調達し、市場で商品やサービスを売って収益を上げる。

市場とは、両者の合意に基づく自由取引で成立するものだ。そこに強制はありえない。自由と強制は反意語なのだ。

「搾取」とは、強制的な収奪だ。真に「搾取」の名に値するものがあるとすれば、税金だけだろう。

「搾取」を企業に対して用いるのは誤っているだけでなく、真の「搾取」がどこにあるかを見失わせる恐れがある。


関連エントリ:
会社が社員をきちんと評価できていないからこそ、雇用流動性が必要なのだ
http://mojix.org/2008/06/04/fluidity_of_employment_for_you