2009.02.06
北海道はハワイよりも北欧を目指せ
Chikirinの日記 - ハワイ化する北海道
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090204

中国や韓国で、映画やTVドラマの影響もあり、北海道が人気なのだそうだ。そこでChikirinさんは、北海道は今後「ハワイ化」し、観光地としての側面を強めていくのではないか?という予測をしている。

<ハワイって「アメリカなのか日本なのかわからん」ってよく言われるじゃない。もちろんハワイ全島ではなく一部のエリアなんだけど。北海道もこれからそうなるかもね、って思いました。特定の観光地に関しては中国人と韓国人とオーストラリア人とかが溢れていて、「ここ、どこの国??」みたいになって。言葉もそれらの言葉ができれば十分に旅行できて。
 あと経済的にもハワイ(もしくは北海道)の経済は、ほとんどその人達からの観光収入で成り立っていて、みたいになる>。

これは面白い話。私は北海道出身なので、これから北海道がどうなるのか、その将来はいつも気になっている。

北海道はたしかに、札幌や旭川の真ん中にあるデパートが潰れたりして、産業や経済は不調のようだが(いまは日本全体が不調で、特に地方はどこもそうだと思うが)、一方で無限とも思える「観光資源」を持っており、「ブランド力」も強いので、観光地としてはまだまだ伸びる余地がありそうだ。

東京から見ると、「北海道」というのは一種の外国みたいなもので、大いにファンタジーに包まれている。牛乳でもラーメンでも、「北海道」と書くだけでイメージアップ、みたいなところがある。たしかに、北海道のものは全般的においしい(特に、実際に北海道に行って何か食べてみれば、別に名店でなくても、ほぼなんでもおいしい。まず水と空気が違うのが大きい)。

ハワイについては、私はいちど行ったことがあるだけだが、大好きになった。いわゆる観光地っぽい、スレた部分ももちろんあるのだが、それ以上に、「ハワイの魔法」みたいな独特の魅力があって、ハワイに何度も通う「ハワイ中毒」の人の気持ちがわかる気がした。

「ブランド力のある観光地」という意味では、北海道とハワイには通じるものがあると思うが、イメージ的には、北海道とハワイというのは、私の中ではあまりつながらないことも確かだ。やはり北海道の広大さ、寒くてカラっとした感じ、空気や水、食べ物のおいしさ、といったイメージと、ハワイの温暖でゆる~い感じ、東京の表参道みたいな街にビーチが隣接しているようなワイキキの感じ、みんなアロハを着ていて、暑いんだけどしょっちゅう雨がふるようなあの感じは、だいぶ違う。

北海道はハワイよりも、むしろアメリカ本土に近いと思う。北海道の広大でカラッとして天然な感じ、いい意味での「未開さ」みたいなものは、アメリカに似ている。

しかしアメリカは、広大なだけでなく、「自由と独立の国」「多民族国家」といった、理想主義でエネルギッシュな側面もある。このへんは、北海道のイメージとはちょっと違う。外国からたくさん観光客が流入しているにせよ、北海道は基本的に「のんきなところ」だと思う。それも南国のゆるい感じではなく、北国の「のんきな感じ」。そしてとにかく広い。その意味では、北海道はアメリカというよりも、北欧っぽいんじゃないだろうか(私は北欧には行ったことがないので、勝手なイメージです)。

私はハワイも大好きなんだけど、北海道の広くてカラっとした、その北国的な天然っぽさの先にあるもの、見習うべき方向としては、ハワイよりもむしろ、北欧のようなポジションじゃないだろうか。

いまや北海道の代表的な観光地のひとつになった旭山動物園なども、ただの天然ではなく、工夫や努力の賜物であることはもちろんだが、方向性としてはやはり「自然」の魅力だ。北海道には、この「自然」の方向の観光資源はたくさんあり、さらに掘り起こしたり、磨いていく余地も大きい。

しかし、自然が美しいとか、空気や食べ物がおいしい、といった方向のビジネスモデルだけでは、経済や文化などの面でどうしても弱くなる。観光・自然といった方向は、観光客や年長者にはいいかもしれないが、現地に住んでいる人、特に比較的若い世代にとっては、「つまらない田舎」にもなりやすい。「自然」や「観光地」という側面だけでなく、北欧のように、デザインなどの文化、ITなどのハイテク、政治・教育などでも世界をリードするような、そういう都市的な文化・社会の方向でも強みや「軸」を持つことができれば、すばらしいと思う。

北海道は日本の最北にあり、地形的にも独立していて、都道府県のなかではケタ外れに大きく、気候もはっきり異なるなど、さまざまな点で「規格外」だ。ぜひ、その「日本のなかの外国」みたいなポジションに磨きをかけて、ただの観光地に留まらない、魅力に「厚み」のある北海道になってほしい。それが、日本という国にも「厚み」をもたらすことになる。

Chikirinさんの「地方のビジネスモデル」ネタでは、以前の「2024年 F本氏の独白」も面白かった(「可能な社会を想像する」)。日本の地方を外国のように見て、そのビジネスモデルを考えるというChikirinさんの視点は、世界じゅうを日常的に飛び回っていることから来ているのかもしれない。