2009.02.05
終身雇用の崩壊
池田信夫blog - [中級経済学事典] 評判メカニズム
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/ed8059bf68fad9f18df23b10bd2edb89

終身雇用についてゲーム理論的に解説した池田氏のエントリだが、これのコメント欄に、「終身雇用は諸刃の剣」というタイトルで次のようなコメントがあった。

<確かに、終身雇用は年齢が高くなると賃金が高くなるので、定年まで会社が存続し、それなりに利益を上げ続けれていれば、労働者にとってメリットはあると思います。
しかし、定年前に会社が倒産、または解雇になればその時点でジ・エンドになります。
50代で借金を抱えてでもいたら、人生終わりです。
定年まで逃げ切れれは勝ちだけど、途中で解雇されたらすべてを失う。
高度成長期なら、こんな心配はしなくても良かったのでしょうけど、今はもう時代が違ってしまっている。
途中でやり直す選択肢がない状態というのは、非常に危険な状態だと思います。
終身雇用というのは、労働者にとって良いもののように語られますが、今となっては、非常に危険な慣習になってしまったと思います>。

まったくその通りだと思う。

タッド・バッジが「終身雇用は、企業を、従業員をダメにしていく」と言っている通りであって、終身雇用というシステムは、<途中でやり直す選択肢がない>のであり、<定年前に会社が倒産、または解雇になればその時点でジ・エンド>なのだ。

日本を代表するクルマや電機の大企業がことごとく大赤字になり、ほとんど全滅なのを見れば、どんな大企業の正社員だって、これから先も安泰というのはもう考えられないだろう。

「もしリストラされたら」「もし会社が倒産したら」と考えてみれば、自分を採用してくれる会社があるのか、真剣に悩むのではないだろうか。「別の会社でも通用するような普遍的なスキルが、自分にあるのだろうか?」と。

こういう時代になってみれば、会社に寄りかからず、市場のなかで直接、自分の腕一本で生きているような人は強い。

けっきょく生き残れるのは、「世の中で必要とされる価値を生み出せる人」であり、「市場で売れるものを持っている人」なのだ。

しかしこれは本来、会社に属している人でも、そうでなければおかしいのだ。世の中で必要とされる価値を生み出していない、市場で売れるものを持っていないのに、給料をもらえていたとすれば、たまたま幸運だったのだ。その幸運な時代が、ついに終わったわけだ。

しかしこれこそ、日本にとって、ほんとうに再生するチャンスだと思う。これからはムダな部分がどんどん削ぎ落とされて、本質がむき出しになってくる。ほんとうに価値を生み出せる人、能力のある人、やる気のある人、努力する人が報われる時代になる。競争原理がはたらいて、みんな真剣に努力するようになるだろう。もう「タダメシ」はないのだ。

終身雇用の崩壊は、「会社」や「仕事」、「キャリア」、「お金」、「市場」、「価値」といった本質的なことについて、多くの人が真剣に考え直すきっかけを与えるだろう。仕事もお金も、天から降ってくるわけではなく、本質的には自分で稼ぐしかない、ということに気づくのだ。

しばらく時間はかかると思うが、その「意識改革」が広く行き渡り、皆が真剣に努力を始めたとき、日本経済は復活に向けて、静かに上昇を始めると思う。


関連エントリ:
「働く」 より 「売る」 が基本
http://mojix.org/2005/10/08/005336