2009.06.14
「次(Next)」と「前(Previous)」というナビゲーションには何かスッキリしないものがある
ウェブサイトで連続的な複数のページがある場合、そのナビゲーションには

「次(Next)」 と 「前(Previous)」

が使われることが多いが、これにはいつも、何かスッキリしないものを感じている。

ブログに代表されるように、たいていの場合は「日時の降順」、つまり「新しい順」に並んでいることが多い。それを考えれば、

「次(Next)」 = もっと古いもの(過去)

「前(Previous)」 = もっと新しいもの(未来)

となるのは明らかではある。

しかし、ウェブやブログを前提としない、普通の「時間感覚」でいえば、前方に未来があり、後方に過去があるので(注)、

「次(Next)」 = 未来(もっと新しいもの)

「前(Previous)」 = 過去(もっと古いもの)

という連想も働かないわけではない。

つまり、まったく反対の意味が、オーバーラップして重なってしまうわけだ。

ここでは、意味やラベルの上で「衝突(Conflict)」が起きている。まずここに「スッキリしない」第1の理由がある。

さらに、多くの場合は、

「← 前」 「次 →」

のように、

左側 = 「前(Previous)」

右側 = 「次(Next)」

という左右の配置になっているが、これが逆になっている場合もある。さらに、「より新しいもの(Newer)」「より古いもの(Older)」といった表現が使われている場合もあり、これの左右も決まっているわけではない。

この、目に見える「左右」という空間配置に対して、そこに何を対応させるべきかが定まっていない、ということが「スッキリしない」第2の理由だ。

結局のところ、それぞれは人間にとって普遍的な感覚である

1) 「未来」「過去」
2) 「前方」「後方」
3) 「左」「右」

という3種類の「方向」を、どのようにマッピング(対応)させて見せるのが自然か、という規則がウェブの世界で確立していないために、場合に応じて「うまくいく組み合わせ」を自分で考えなければならないわけだ。

「次」「前」という表現は、1次元的な「順序」を前提としており、この3つの方向感覚でいうと、2)の「前方」「後方」にもっとも近いだろう。これを1)の「時間」とどう対応づけるか、さらに画面上の配置として3)の「左右」とどう対応づけるか、という組み合わせがいろいろあるわけだ。

この「思考コスト」をしょっちゅう強いられること、いわば「迷いの感覚」が、「ナビゲーション」というものにおいて発生しているわけだ。これは「ナビゲーション」というものの役割を考えれば、いわば根本的な矛盾であって、「ナビゲーションの危機」ともいえるだろう。

この「迷いの感覚」が、「スッキリしないもの」の正体だと思う。スッキリしないまま、「解決」も見あたらないところが、余計にスッキリしない。

注:
「前方に未来があり、後方に過去がある」は人間の普遍的な感覚ではなく、インドなどでは「未来に向かってあとずさりする」と考える、と聞いたことがある(その真偽については知らない)。「未来に向かってあとずさりする」なら、「前方に過去があり、後方に未来がある」と考えるかもしれない。