2009.06.15
減税を否定する政治家は、経済をわかっていない政治家
asahi.com - 「減税言うだけで…」自民・細田氏発言に河村市長カチン(2009年6月14日11時33分)
http://www.asahi.com/politics/update/0614/NGY200906140001.html

<自民党の細田博之幹事長は13日、名古屋市内のホテルで開いた講演会で、市民税10%減税を掲げて当選した河村たかし市長について、「言うだけで人気を得て当選すればいいってもんじゃないことを嫌と言うほど知っていただくことが大切」と痛烈に批判した。一方、河村市長は「オバマ米大統領も減税を掲げて当選していますが、大統領にも同じことを言ってはいかがか」と反論している。
 細田幹事長は、民主党の年金政策について、「不安をかき立てて制度を崩壊させるという絶対やってはならない『禁じ手』で攻めてくる」と非難した。さらに、民主党の推薦を受けて当選した河村市長を引き合いに出し、「どこぞの市長さんも禁じ手をいっぱい提案し、市民が『税金が安くなるんだ』なんて思って当選した市長だって、どうしようもないってことはみんなわかっているんです。困る一方です」と断じた。
 この発言について、河村氏は朝日新聞の取材に「できもしないことを言っているのは、どちらなのか」と応酬。「増税で役人と議員を栄えさせるばかりで、どうやって経済を立て直すのか逆にお聞きしたい」と反発した>。

この記事の通りに言っているのだとすれば、これは河村市長が正しいと思う。

日本は税金が高く、規制が強くて、いわば「政府が民間を潰している」状態。税金を安くして、規制を弱めれば、日本経済はかなり回復する。しかしそれをやらずに、政府と既得権益者を守りつづけていて、そのために全体が沈みつづけている。

河村市長の政策すべてが正しいとは限らないにしても、「減税」という基本的な方向は正しい。現状では、「減税」をはっきり打ち出している政治家というのはあまり見当たらないので、これを掲げて当選した河村市長の存在は貴重だ。それを「言うだけで人気を得て当選すればいいってもんじゃないことを嫌と言うほど知っていただくことが大切」と批判するというのは、細田幹事長はどういう神経なのか。

年金制度も持ち出しているが、年金制度こそ、いまの日本においていわば「最悪の制度」なわけで、これがどれだけ世代の不公平と将来の不安を生み出しているか、計り知れない。経済成長も止まり、少子高齢化がどんどん進む日本では、いまの年金制度は数の少ない若い世代・将来世代へ借金をツケ回すだけの、いわば「ねずみ講」だ。これが一向に改善される気配がない以上、批判されるのは当然だろう。それを「不安をかき立てて制度を崩壊させるという絶対やってはならない『禁じ手』で攻めてくる」というのは、まるでねずみ講の主宰者が、会員の離脱を食い止めようとしている姿に見えてくる。年金制度は「崩壊」させることを真面目に考えたほうがいい段階に来ていると思う。

細田幹事長はとにかく「敵」である民主党を批判したかったという党派的行動なのかもしれないが、これはむしろ逆効果で、「自民党はこんなことを言う人が幹事長をやっているのか」と思われて、自民党のイメージダウンになりそうだ(少なくとも、河村市長を支持する人にとってはそうだろう)。とはいえ、この種の批判をやるのは民主党も同じで、とにかく自民党を批判し、自民党に反対することが目的化しているような行動が目につく(この点では自民党以上だろう)。自民党も民主党も、子供のケンカみたいな態度はやめて、「相手のいいところは認める」という大人の態度に切り替えたほうがいい。そのほうが印象が良くなって、むしろ説得力が出ると思う。

減税を否定する政治家は、政府のムダを削ったり、規制を緩和する気がなく、国民の負担を増やすことしか考えられない政治家だと私は見なす。国民の負担を増やせば民間の活力が失われ、日本経済が失速していく。つまり、減税を否定する政治家は、要するに経済をわかっていない政治家だと私は見なす。もし経済をわかっているのにあえてそうしているのなら、いわば「確信犯」であって、国民の「裏切り者」と言われても仕方がないだろう。

その意味でも、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」はいい仕事をしていると思う。「国立メディア芸術センターは不要」という見解は、民主党と同じであって、とにかく民主党に反対するというおかしな行動原理がない。そしてその見解も、税金のムダ使いをさせないというプロジェクトの目的と同じく、国民の目線を感じさせるものだ。<民主導でやってきたものを、後追いで官がてこ入れしても効果はあまり期待できず、むしろ官は民の側面支援に限定すべき>といったコメントを読んでも、この人たちは「経済をわかっている」スタンスで、基本的な方向が正しいという安心感がある。<このような事業が通ってしまったことで、補正予算全体の信憑性も問われかねない。政府・与党の統治能力が問われる>とまで河野座長はコメントしていて、いわば自民党を内側から自己批判しているわけだ。こういう態度こそ、信用できると思う。


関連エントリ:
自民党・無駄遣い撲滅プロジェクトチーム「国立メディア芸術センターはまったく不要」
http://mojix.org/2009/06/12/mudabo_media_center
減税は「バラマキ」なのか?
http://mojix.org/2008/08/30/genzei_baramaki
雇用規制撤廃と減税で日本経済は再生する
http://mojix.org/2008/05/28/revive_japan_economy