自民党・無駄遣い撲滅プロジェクトチーム「国立メディア芸術センターはまったく不要」
先日書いた「マンガの殿堂」こと国立メディア芸術センターの計画(2009年度補正予算案に事業費117億円)について、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」が内容を精査し、不要だと判断したとのこと。
YOMIURI ONLINE - アニメの殿堂「百害あって一利なし」と自民・河野太郎議員(2009年6月8日23時21分)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090608-OYT1T01160.htm
<「百害あって一利なし。予算を凍結すべきだ」──自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の河野太郎衆院議員が8日、都内で開いた文部科学省との公開討論会で、今年度補正予算に盛りこまれた「アニメの殿堂」とも呼ばれる「国立メディア芸術総合センター」にかみついた。
文科省の事業の必要性を評価するための討論会には、河野氏のほか当選1回の議員7人が参加。補正予算に117億円が計上された同センターに対するチームとしての評価は「不要」。その理由として、「(アニメ分野には)箱もの建設より人材育成に投資すべきだ」と指摘した。
補正予算審議で野党が無駄遣いの象徴としてやり玉に挙げた同センターに与党からも批判が出た形だが、河野氏らは補正予算に賛成している。「予算は一括して賛否を問われるから(賛成した)。与党の一員として肩身の狭い思いだ」と強調する河野氏に対し、ある党幹部は「自民党は言論抑圧しないから……」と言いつつも苦々しい表情だった>。
この「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の一員でもある山内康一衆議院議員が、自身のブログでこれに触れている。
衆議院議員 山内康一 の「公募新人奮闘記」 - 文科省の事業仕分け
http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-71e9.html
<昨年の文部科学省の事業仕分けの続きで、文科省関連の独法・公益法人を、昨日9時から18時半までの終日かけて(私は途中別件で抜けましたが)、党の無駄遣い撲滅プロジェクトチームでチェックしました。いつものように民間シンクタンクの構想日本にお手伝いいただき、議論の様子をオープンにして、事業仕分けを行いました>。
<最初の案件は独立行政法人国立美術館です。補正予算の中で激しい批判を浴びたメディア芸術センターが含まれます。マスコミ等で「国営マンガ喫茶」と揶揄されているものです>。
<マンガやアニメ、コンピューターグラフィック等のメディア芸術が、産業としても、日本のイメージアップのためにも、重要なのはわかります。しかし、そのために専門のハコモノを作るべきかと言えば、議論の余地は大いにあります>。
<文部省の担当課の説明を聞くと、117億円もの予算を確保しながら、計画の細部はまったく詰まっていません。建設費は考えていますが、将来にわたる維持管理費は考えていません>。
やはり私が予想した通りだ。理念は素晴らしいが、事業内容はズサンらしい。ハコモノなんて大体そんなものだろう。立派な理念は「利用されている」だけなのだ。
こういう話で特に重要なのは、初期費用よりもランニングコスト(維持管理費)だ。ランニングコストがいかに効いてくるかは、ケータイとかプリンターを思い浮かべて欲しい。ハコモノもこれに似ていて、ハコだけでは何もできないから、職員の人件費や事業運営にカネがかかる。初期費用の117億円は決して安くはないが、それでもこの事業が仮に失敗したとき、この117億円だけで済むのなら、傷はさほど深くならない。
実際は、いったんできてしまえば撤退はむずかしく、天下りのポストや職員の雇用もあるので抵抗が生じて、そうかんたんにやめられない。おそらくランニングコストの数年分くらいで、初期費用に達するくらいの規模ではないだろうか。そういうハコモノによる赤字垂れ流しが、国の財政をむしばんでいく。そのツケはすべて国民が払うのだ。
この国立メディア芸術センターを含む、「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」による精査の内容は、以下で詳しく読める。
文科省所管 独立行政法人/公益法人 政策棚卸し 結果速報&当日配布資料
2009/06/08(月)更新
http://www.kosonippon.org/project/detail.php?m_project_cd=741&m_category_cd=16
ここにある「仕分け人のコメント」(PDF)の1~2ページに、「国立メディア芸術センター」に対する評価が書かれている。以下に抜粋してみよう。
(抜粋ここから)
1.
国立美術館(事業番号 1)
H21補正予算国立メディア芸術センターについて
河野座長の評定
不要
(不要8名、民間1名)
評価者のコメント
・新しい施設はまったく不要
・予算執行は停止すべき。今後の運営コストも含めた見積がいい加減な現状では税金を使うことは認められない。
・デジタルコンテンツを推進するためにクリエイターを育成することは大事だが、メディアセンター設立とは結びつかない。
・「私のしごと館」と同じような「私のメディア館」になりそう。
・補正予算で117億円のハコモノを創ることと、将来のコンテンツ産業を育成することが直接結びつかない。
・民主導でやってきたものを、後追いで官がてこ入れしても効果はあまり期待できず、むしろ官は民の側面支援に限定すべき。
・ハコモノ設置に加え、今後の国費投入の可能性が高く、大きな国民負担となる一方で、新産業振興につながり経済力アップに結びつく道筋は見えない。
・117億円の予算が確保できるなら、クリエイターの育成支援や翻訳・海外進出のサポート、寄付金優遇の拡充など、ソフトにまわすべき。
・本来は、国立美術館の中にメディア芸術の展示場をつくるべきでは。
・芸術等で本当に重要なのは、企画や人材育成、保管であり、そちらに経費投入すべき。東京にひとつより、全国の既存施設で巡回展示することの方が意味あり。
河野座長のコメント
・今までの棚卸し対象の中で最もひどい事業であり、ただちに執行停止すべき。
・海外への発信というが、効果などまったく計画・予測が立っていない。とても 21世紀への投資とは思えない。
・ここにいる国会議員も大いに反省するところであり、このような事業が通ってしまったことで、補正予算全体の信憑性も問われかねない。政府・与党の統治能力が問われる。
(抜粋ここまで)
<新しい施設はまったく不要>、<予算執行は停止すべき>など、この施設が不要であるという見解が明快に述べられている。
さらに、<民主導でやってきたものを、後追いで官がてこ入れしても効果はあまり期待できず、むしろ官は民の側面支援に限定すべき>、<このような事業が通ってしまったことで、補正予算全体の信憑性も問われかねない。政府・与党の統治能力が問われる>など、この国立メディア芸術センターの話を超えて、政策的なスタンスも示されている。個人的にはほぼ賛成できる見方ばかりだ。
なお、これにかかわった「仕分け人」は以下の通り(「仕分け人一覧」(PDF)より)。
文科省所管独立行政法人・公益法人政策棚卸し 仕分け人一覧
河野太郎 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)主査
石原宏高 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
越智隆雄 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
亀井善太郎 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
平将明 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
福田峰之 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
山内康一 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
丸川珠代 参議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
※五十音順
荒井英明 厚木市職員
安念潤司 中央大学法科大学院教授
井澤幸雄 小田原市職員
伊藤伸 構想日本政策担当ディレクター
小瀬村寿美子 厚木市職員
伊永隆史 首都大学東京教授
福嶋浩彦 中央学院大学教授、前我孫子市長
松井孝典 東京財団特別上席研究員
※五十音順
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YOMIURI ONLINE - アニメの殿堂「百害あって一利なし」と自民・河野太郎議員(2009年6月8日23時21分)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090608-OYT1T01160.htm
<「百害あって一利なし。予算を凍結すべきだ」──自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の河野太郎衆院議員が8日、都内で開いた文部科学省との公開討論会で、今年度補正予算に盛りこまれた「アニメの殿堂」とも呼ばれる「国立メディア芸術総合センター」にかみついた。
文科省の事業の必要性を評価するための討論会には、河野氏のほか当選1回の議員7人が参加。補正予算に117億円が計上された同センターに対するチームとしての評価は「不要」。その理由として、「(アニメ分野には)箱もの建設より人材育成に投資すべきだ」と指摘した。
補正予算審議で野党が無駄遣いの象徴としてやり玉に挙げた同センターに与党からも批判が出た形だが、河野氏らは補正予算に賛成している。「予算は一括して賛否を問われるから(賛成した)。与党の一員として肩身の狭い思いだ」と強調する河野氏に対し、ある党幹部は「自民党は言論抑圧しないから……」と言いつつも苦々しい表情だった>。
この「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の一員でもある山内康一衆議院議員が、自身のブログでこれに触れている。
衆議院議員 山内康一 の「公募新人奮闘記」 - 文科省の事業仕分け
http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-71e9.html
<昨年の文部科学省の事業仕分けの続きで、文科省関連の独法・公益法人を、昨日9時から18時半までの終日かけて(私は途中別件で抜けましたが)、党の無駄遣い撲滅プロジェクトチームでチェックしました。いつものように民間シンクタンクの構想日本にお手伝いいただき、議論の様子をオープンにして、事業仕分けを行いました>。
<最初の案件は独立行政法人国立美術館です。補正予算の中で激しい批判を浴びたメディア芸術センターが含まれます。マスコミ等で「国営マンガ喫茶」と揶揄されているものです>。
<マンガやアニメ、コンピューターグラフィック等のメディア芸術が、産業としても、日本のイメージアップのためにも、重要なのはわかります。しかし、そのために専門のハコモノを作るべきかと言えば、議論の余地は大いにあります>。
<文部省の担当課の説明を聞くと、117億円もの予算を確保しながら、計画の細部はまったく詰まっていません。建設費は考えていますが、将来にわたる維持管理費は考えていません>。
やはり私が予想した通りだ。理念は素晴らしいが、事業内容はズサンらしい。ハコモノなんて大体そんなものだろう。立派な理念は「利用されている」だけなのだ。
こういう話で特に重要なのは、初期費用よりもランニングコスト(維持管理費)だ。ランニングコストがいかに効いてくるかは、ケータイとかプリンターを思い浮かべて欲しい。ハコモノもこれに似ていて、ハコだけでは何もできないから、職員の人件費や事業運営にカネがかかる。初期費用の117億円は決して安くはないが、それでもこの事業が仮に失敗したとき、この117億円だけで済むのなら、傷はさほど深くならない。
実際は、いったんできてしまえば撤退はむずかしく、天下りのポストや職員の雇用もあるので抵抗が生じて、そうかんたんにやめられない。おそらくランニングコストの数年分くらいで、初期費用に達するくらいの規模ではないだろうか。そういうハコモノによる赤字垂れ流しが、国の財政をむしばんでいく。そのツケはすべて国民が払うのだ。
この国立メディア芸術センターを含む、「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」による精査の内容は、以下で詳しく読める。
文科省所管 独立行政法人/公益法人 政策棚卸し 結果速報&当日配布資料
2009/06/08(月)更新
http://www.kosonippon.org/project/detail.php?m_project_cd=741&m_category_cd=16
ここにある「仕分け人のコメント」(PDF)の1~2ページに、「国立メディア芸術センター」に対する評価が書かれている。以下に抜粋してみよう。
(抜粋ここから)
1.
国立美術館(事業番号 1)
H21補正予算国立メディア芸術センターについて
河野座長の評定
不要
(不要8名、民間1名)
評価者のコメント
・新しい施設はまったく不要
・予算執行は停止すべき。今後の運営コストも含めた見積がいい加減な現状では税金を使うことは認められない。
・デジタルコンテンツを推進するためにクリエイターを育成することは大事だが、メディアセンター設立とは結びつかない。
・「私のしごと館」と同じような「私のメディア館」になりそう。
・補正予算で117億円のハコモノを創ることと、将来のコンテンツ産業を育成することが直接結びつかない。
・民主導でやってきたものを、後追いで官がてこ入れしても効果はあまり期待できず、むしろ官は民の側面支援に限定すべき。
・ハコモノ設置に加え、今後の国費投入の可能性が高く、大きな国民負担となる一方で、新産業振興につながり経済力アップに結びつく道筋は見えない。
・117億円の予算が確保できるなら、クリエイターの育成支援や翻訳・海外進出のサポート、寄付金優遇の拡充など、ソフトにまわすべき。
・本来は、国立美術館の中にメディア芸術の展示場をつくるべきでは。
・芸術等で本当に重要なのは、企画や人材育成、保管であり、そちらに経費投入すべき。東京にひとつより、全国の既存施設で巡回展示することの方が意味あり。
河野座長のコメント
・今までの棚卸し対象の中で最もひどい事業であり、ただちに執行停止すべき。
・海外への発信というが、効果などまったく計画・予測が立っていない。とても 21世紀への投資とは思えない。
・ここにいる国会議員も大いに反省するところであり、このような事業が通ってしまったことで、補正予算全体の信憑性も問われかねない。政府・与党の統治能力が問われる。
(抜粋ここまで)
<新しい施設はまったく不要>、<予算執行は停止すべき>など、この施設が不要であるという見解が明快に述べられている。
さらに、<民主導でやってきたものを、後追いで官がてこ入れしても効果はあまり期待できず、むしろ官は民の側面支援に限定すべき>、<このような事業が通ってしまったことで、補正予算全体の信憑性も問われかねない。政府・与党の統治能力が問われる>など、この国立メディア芸術センターの話を超えて、政策的なスタンスも示されている。個人的にはほぼ賛成できる見方ばかりだ。
なお、これにかかわった「仕分け人」は以下の通り(「仕分け人一覧」(PDF)より)。
文科省所管独立行政法人・公益法人政策棚卸し 仕分け人一覧
河野太郎 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)主査
石原宏高 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
越智隆雄 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
亀井善太郎 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
平将明 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
福田峰之 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
山内康一 衆議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
丸川珠代 参議院議員・無駄撲滅PT(文部科学等分野)
※五十音順
荒井英明 厚木市職員
安念潤司 中央大学法科大学院教授
井澤幸雄 小田原市職員
伊藤伸 構想日本政策担当ディレクター
小瀬村寿美子 厚木市職員
伊永隆史 首都大学東京教授
福嶋浩彦 中央学院大学教授、前我孫子市長
松井孝典 東京財団特別上席研究員
※五十音順
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