岩本康志「痛み止めで、前より健康にはなれない」
経済学者の岩本康志氏が、政府による今回の追加経済対策が「過去最大の失敗」になるだろうと述べている。
岩本康志のブログ - 過去最大の失敗
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/26736387.html
<政府・与党は10日,追加の経済対策「経済危機対策」を決定した。財政支出15.4兆円,事業規模56.8兆円はいずれも過去最大。
1990年代には,過去最大をうたった景気対策がたびたび実施されたが,巨額の財政出動に比する効果をあげられず,「失敗」と評価されている。この評価は経済学的なものではなく,景気対策を支持した政治家と国民が期待する成果をあげられなかったという,政治的なものである。このときの財政政策は経済学的に期待される程度の効果はあったと私は考えているが,一般にはそれ以上の効果があると期待されて,それが裏切られたということだ。
また,「過去最大」という量が優先され,無駄な支出をしたという批判を浴びたことが,失敗のもうひとつの要素である。「現場から見た補正予算」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/26628561.html)でのべたように,巨額の補正予算を無駄なく編成するのは至難の業だ。
今回の対策も,経済学的に予想される以上の効果を期待していること,量にこだわったこと,の2つの構造を継承しているので,失敗しない理由を探すことが難しい>。
<一時的な財政支出拡大の効果は一時的な所得拡大であり,景気の落ち込みを部分的に相殺することが目的だ。喩えるならば,痛み止めである。景気の回復は民間の自律的な成長によってもたらされる。ところが,財政出動に積極的な政治家は,財政出動で成長率が回復すると信じているようである。今回の対策でも成長戦略が大きな比重を占めた。しかし,一時的な支出で経済成長(つまりは恒久的な所得増)が実現するような事業があるならば,何も景気が悪いときだけ補正予算で実行することはない。どんなときでも当初予算で実行すべきものだが,そういう事業は希少である。補正予算編成の際に急いでかき集めるときだけ,すばらしいアイデアがぽんぽんと湧いてくるわけではない。
結局,景気対策で経済成長率が高まるという期待がそもそも経済学的におかしいのであり,期待は裏切られるだろう。痛み止めで,前より健康にはなれない>。
とても説得力のある記述で、まったく同感だ。私も今回の追加経済対策は、大部分が税金のムダ使いに終わり、日本の財政赤字をいっそうひどくするだけだと思う。
<痛み止めで、前より健康にはなれない>というメタファーは、まさにぴったりだ。日本にはバラマキではなく、構造改革という「体質改善」が必要なのだ。
こういう急場のバラマキは、バラマキが目的であることが明白なので、価格に見合う中身を持たない連中がそこに群がる。派手に使って、借金が増えるだけで、あとには何も残らないだろう。まさに「悪銭身につかず」だ。
<景気の回復は民間の自律的な成長によってもたらされる>。まったくその通りだ。日本経済を沈滞させているのは、強い規制と高い税金によって<民間の自律的な成長>をジャマして、そのうえ税金のムダ使いを続けている政府なのだ。今回は特に大きなムダ使いだから、日本経済はさらに大きく沈滞するだろう。
こんな恣意的なバラマキで税金をムダ使いするくらいなら、経済対策分を全額、定額給付金によって「現ナマ」で国民に戻したほうがまだマシだろう。定額給付金はさんざんな不評だったが、今回のバラマキのほうがはるかに筋が悪いうえに、規模が大きい。
岩本氏は、<財政出動は経済学の合理性だけで決まるものでなく,政治過程の産物である。景気が悪くなり,失業者が増えているときに,政府が何もしないのは政治的に困難である>と書いている。まったくその通りだろう。これは日本だけでなく、アメリカなどにも言える。
日本政府にとって、派手なバラマキはさぞや気持ちがいいものだろう。しかしそこで「大盤振る舞い」されているのは、国民の税金なのだ。国民の税金を、政府が派手に使い込んでいるだけの話だ。政府にとって、国民の税金は自分のカネではないから、ちっとも大事にしないし、ムダ使いしてもへっちゃらなのだ。
日本をほんとうに良くするには、むしろバラマキをやめて、日本の「構造」、つまり「制度設計」を変えなければならない。それは政府だけでなく、国民にとっても、苦しみや「痛み」をともなうだろう。しかし、そこから逃げ回っている限り、日本は変われないまま、どんどん沈みつづけるのだ。
関連:
池田信夫 blog - 「史上最大の景気対策」についての懐疑的リンク集
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/09f4c1bbc82965e36efd4c127275fa4f
池田信夫 blog - 成長戦略とは何か
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/e4e70748ce779a91b2d0846cd3a2fb72
アゴラ - 経済の質をいかに上げるか - 池田信夫
http://agora-web.jp/archives/560839.html
関連エントリ:
バラマキではなく「希望」を
http://mojix.org/2008/11/15/bot_baramaki_but_kibou
岩本康志のブログ - 過去最大の失敗
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/26736387.html
<政府・与党は10日,追加の経済対策「経済危機対策」を決定した。財政支出15.4兆円,事業規模56.8兆円はいずれも過去最大。
1990年代には,過去最大をうたった景気対策がたびたび実施されたが,巨額の財政出動に比する効果をあげられず,「失敗」と評価されている。この評価は経済学的なものではなく,景気対策を支持した政治家と国民が期待する成果をあげられなかったという,政治的なものである。このときの財政政策は経済学的に期待される程度の効果はあったと私は考えているが,一般にはそれ以上の効果があると期待されて,それが裏切られたということだ。
また,「過去最大」という量が優先され,無駄な支出をしたという批判を浴びたことが,失敗のもうひとつの要素である。「現場から見た補正予算」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/26628561.html)でのべたように,巨額の補正予算を無駄なく編成するのは至難の業だ。
今回の対策も,経済学的に予想される以上の効果を期待していること,量にこだわったこと,の2つの構造を継承しているので,失敗しない理由を探すことが難しい>。
<一時的な財政支出拡大の効果は一時的な所得拡大であり,景気の落ち込みを部分的に相殺することが目的だ。喩えるならば,痛み止めである。景気の回復は民間の自律的な成長によってもたらされる。ところが,財政出動に積極的な政治家は,財政出動で成長率が回復すると信じているようである。今回の対策でも成長戦略が大きな比重を占めた。しかし,一時的な支出で経済成長(つまりは恒久的な所得増)が実現するような事業があるならば,何も景気が悪いときだけ補正予算で実行することはない。どんなときでも当初予算で実行すべきものだが,そういう事業は希少である。補正予算編成の際に急いでかき集めるときだけ,すばらしいアイデアがぽんぽんと湧いてくるわけではない。
結局,景気対策で経済成長率が高まるという期待がそもそも経済学的におかしいのであり,期待は裏切られるだろう。痛み止めで,前より健康にはなれない>。
とても説得力のある記述で、まったく同感だ。私も今回の追加経済対策は、大部分が税金のムダ使いに終わり、日本の財政赤字をいっそうひどくするだけだと思う。
<痛み止めで、前より健康にはなれない>というメタファーは、まさにぴったりだ。日本にはバラマキではなく、構造改革という「体質改善」が必要なのだ。
こういう急場のバラマキは、バラマキが目的であることが明白なので、価格に見合う中身を持たない連中がそこに群がる。派手に使って、借金が増えるだけで、あとには何も残らないだろう。まさに「悪銭身につかず」だ。
<景気の回復は民間の自律的な成長によってもたらされる>。まったくその通りだ。日本経済を沈滞させているのは、強い規制と高い税金によって<民間の自律的な成長>をジャマして、そのうえ税金のムダ使いを続けている政府なのだ。今回は特に大きなムダ使いだから、日本経済はさらに大きく沈滞するだろう。
こんな恣意的なバラマキで税金をムダ使いするくらいなら、経済対策分を全額、定額給付金によって「現ナマ」で国民に戻したほうがまだマシだろう。定額給付金はさんざんな不評だったが、今回のバラマキのほうがはるかに筋が悪いうえに、規模が大きい。
岩本氏は、<財政出動は経済学の合理性だけで決まるものでなく,政治過程の産物である。景気が悪くなり,失業者が増えているときに,政府が何もしないのは政治的に困難である>と書いている。まったくその通りだろう。これは日本だけでなく、アメリカなどにも言える。
日本政府にとって、派手なバラマキはさぞや気持ちがいいものだろう。しかしそこで「大盤振る舞い」されているのは、国民の税金なのだ。国民の税金を、政府が派手に使い込んでいるだけの話だ。政府にとって、国民の税金は自分のカネではないから、ちっとも大事にしないし、ムダ使いしてもへっちゃらなのだ。
日本をほんとうに良くするには、むしろバラマキをやめて、日本の「構造」、つまり「制度設計」を変えなければならない。それは政府だけでなく、国民にとっても、苦しみや「痛み」をともなうだろう。しかし、そこから逃げ回っている限り、日本は変われないまま、どんどん沈みつづけるのだ。
関連:
池田信夫 blog - 「史上最大の景気対策」についての懐疑的リンク集
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/09f4c1bbc82965e36efd4c127275fa4f
池田信夫 blog - 成長戦略とは何か
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/e4e70748ce779a91b2d0846cd3a2fb72
アゴラ - 経済の質をいかに上げるか - 池田信夫
http://agora-web.jp/archives/560839.html
関連エントリ:
バラマキではなく「希望」を
http://mojix.org/2008/11/15/bot_baramaki_but_kibou