2008.11.15
バラマキではなく「希望」を
池田信夫 blog - 世界デフレが来る?
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f99500672ce9b6f748fb9de4f7ce24b0

<デフレの最大の原因は投資意欲の落ち込みなので、人々が日本経済の将来に希望をもつことが本質的な解決策である。その意味で小泉首相の改革へのcommitmentは、「日本は長期的には立ち直る」という期待を人々にもたせ、投資を回復させた。「劇場政治」などといわれたが、現代の経済にはメディアという劇場が大事なのだ>。

<日本の教訓を生かすなら、これから始まりそうな世界デフレにも、非正統的な金融政策などの「魔法の杖」はない。過剰債務をすみやかに整理して金融システムを正常化し、人々を安心させることが最善の策だ。そして何より大事なのは、そういう政策を国民に伝え、信頼を得ることのできる力強い指導者だ――という日本の教訓は、そのまま世界各国にも生かせるのではないか。この時期にオバマが大統領に就任するのは、不幸中の幸いだ>。

これは完全に同意。

目先だけの景気対策は無意味なだけでなく、財政を悪くするうえに、むしろ不信を大きくする(その意味では、私はオバマ政権もあまり信じていない)。

1人あたり12,000円配るという定額給付金など、「抜本的な対策はできないので、とりあえずこれで機嫌を直してね」といって小遣いを渡すようなものだろう。その小遣いも税金なわけで、何かバカにされているような気がする。あるいは、見かけ上の売上(GDP)を作るだけの「粉飾」みたいなものだ。無意味な公共工事などに消えるよりマシかもしれないが、こんなことで景気が回復するわけがないし、税金を集めてまた払い戻すという往復のコストも相当なもののはずで、なんとも壮大なナンセンスだ。

問題の中心は、日本の将来に「希望」が持てないということなのだ。戦後の日本はずっと貧乏だったが、希望をもっていた。いまの日本は経済水準は上がったが、この先に希望が見えない。

人間は先の「見通し」にしたがって行動する。見通しが明るければ、マインドが「攻め」モードになり、投資も消費もする。見通しが暗ければ、マインドが「守り」モードになり、投資も消費も控える。これは株価が動くメカニズムと同じであって、人間の経済行動をつらぬく基本的原理だ。

日本の場合、「政治をマトモにする」ことが最大の経済対策だろうし、それ以外の対策はないとすら思える。日本の最大の問題は、景気が悪いとか、少子高齢化とかではなく、そういった現実に対して、政治が対応できる能力を持っていないように見えることだ。1人あたり12,000円配るなんて、何も改善しないで将来にツケを回しているだけの自転車操業であって、そのバカらしさは年金とまったく同じだ。

年金制度は、その「設計」(ビジネスモデル)自体が間違っているうえに、デタラメなオペレーションで大きな損失を生み出している。設計もダメ、オペレーションもダメという無責任ぶりで、民間会社ではありえないレベルだろう(ありえたとしても、民間会社なら倒産するまでだ)。国民はそんなものの存続に税金を払わされているのだ。老後に希望が持てるどころか、むしろ本当にもらえるのか、老後が不安になってくる。こんな年金制度であれば、なくしてしまったほうがいい。

「これなら日本は大丈夫だ」と国民が希望を持てるようになるには、年金改革や地方分権、労働ビッグバンといった「設計の改善」を強力に推進し、古くてムダな部分を大胆に捨てられるような、政策力と実行力をあわせ持った政治的リーダーが必要だ。いまの自民党も民主党も、それにはほど遠いように思える。


関連エントリ:
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http://mojix.org/2005/10/13/205622