2010.06.05
菅直人氏、第94代首相に 小沢氏はキングメーカーでなくなり、「反小沢派」が「主流化」しつつある
asahi.com - 菅氏、第94代首相に指名 官房長官に仙谷氏内定(2010年6月4日15時0分)
http://www.asahi.com/politics/update/0604/TKY201006040212.html


民主党の新代表に決まり、拳を上げる菅直人氏=4日午後0時28分、国会内、飯塚悟撮影

<民主党代表選が4日、行われ、菅直人・副総理兼財務相(63)が過半数を大きく超える291票を獲得し、新代表に選ばれた。菅氏は同日午後の衆参両院の本会議で、第94代首相に指名された。菅氏は同日、国民新党代表の亀井静香金融相と国会内で会談し、連立の継続で一致した。新内閣の官房長官に、仙谷由人・国家戦略相の起用が内定した。組閣は週明けに持ち越される。新内閣発足まで、鳩山内閣が職務を継続する>。


衆院本会議で首相に指名され、一礼する民主党の菅直人新代表。手前は鳩山由紀夫氏=4日午後2時36分、国会内、川村直子撮影

<党代表選には、菅氏と樽床伸二・衆院環境委員長(50)の2人が立候補した。両院議員総会は午前11時、国会内の講堂で行われ、党所属国会議員422人が投票。樽床氏の得票は129票だった。
 午後2時から衆院本会議で開かれた首相指名選挙で、菅氏が313票で首相に指名された。2時半すぎからの参院本会議でも、菅氏が首相に指名された。
 菅氏は代表選出後、所属議員へのあいさつで「ここにノーサイドの宣言をさせていただく。日本の立て直しのため、みなさんと全力で取り組み、目の前の参院選に一致結束して戦い抜く」と述べ、挙党態勢への協力を要請した。
 その後、菅氏は仙谷氏とともに、亀井氏と国会内で会談。今国会で審議中の郵政改革法案については「速やかな成立を期す」、民主、国民新、社民で合意した3党連立合意については「引き継ぐものとする」ことで一致し、連立の維持を確認した>。

4日の民主党代表選は菅氏と樽床伸二氏の2人が立候補して菅氏が勝利、その後菅氏が第94代首相に指名された。

私が3日のエントリで書いた「前原シナリオ」は、そもそも前原氏が代表選に立候補せず、岡田氏とともに菅氏支持に回ったことで早々と消えた。しかしおもしろいのは、「反小沢派」である前原氏・岡田氏らが、小沢氏に近い菅氏を支持して、流れを決めたことだ。いっぽう小沢グループは樽床(たるとこ)氏を立てたが、これでは誰が見ても菅氏に決まる。

これは一見、樽床氏は単なる「当て馬」であり、「出来レース」のように見えなくもない。どっちみち小沢氏が実質的な力を持っているのだが、菅氏にタテマエ上「反小沢」のスタンスを取らせて、菅氏に勝たせるというシナリオだろう、という見方だ。私も最初はそうかと思ったのだが、なぜ前原氏や岡田氏が菅支持に回ったかを考えると、そこまで単純な話でもない気がする。

前原氏や岡田氏の立場で考えると、おそらくこうなる。もし自らが「反小沢派」として代表選に立候補すれば、小沢グループは間違いなく菅氏を立てるので、小沢派と反小沢派のガチンコになる。こうなれば、数の上でおそらく勝てない。また、たった数日で新内閣を選び、その後は参院選も控えている上に、現段階では国民新党との連立も崩しにくい以上、新内閣は鳩山内閣の顔ぶれから大きく変えられない。この状況で無理に「反小沢派」側から立候補すれば、勝ったとしても不自由でやりにくく、負ければ当然ポスト配分で干される。だとすれば、今回は見送って、むしろ菅氏を引き込んだほうがいい。おそらく、こんなふうに考えたのではないだろうか。

この「反小沢派」の動きは、菅氏から見ても好都合だったはずだ。そもそも、鳩山・小沢のツートップに対する国民の不支持が強くて2人が辞めるに至ったのだから、菅氏は小沢グループから担がれる格好になるのはあまり好ましくないと思うだろう。「反小沢派」が支持してくれたほうがいいわけだ。

こうして「反小沢派」と菅氏の思惑が一致し、「反小沢派」が菅氏を取り込んだような格好になった、というのが真相に近いのではないだろうか。実際、官房長官に仙谷氏が内定しただけでなく、枝野氏が幹事長に内定したという。

asahi.com - 民主幹事長に枝野氏内定 組閣は8日、国会会期延長案も(2010年6月4日22時39分)
http://www.asahi.com/politics/update/0604/TKY201006040488.html

<菅直人・副総理兼財務相(63)が4日、衆参両院の本会議で第94代首相に指名された。民主党はこれに先立ち菅氏を党代表に選出。菅新首相は、官房長官に仙谷由人・国家戦略相、党幹事長に枝野幸男・行政刷新相を起用する人事を内定した。正式な組閣は8日、党人事は7日にそれぞれ行う。菅氏は党代表選後に国民新党代表の亀井静香金融相と会談し、連立政権の継続を確認した。政権内では、国民新党が求める郵政改革法案の今国会成立のため、16日までの国会会期を2週間程度延長する案が浮上している。その場合、7月11日投開票の参院選日程もずれ込むことになる>。

<菅新首相は、辞任を表明した小沢一郎幹事長に距離を置いてきた仙谷、枝野両氏を内閣と党の要にそれぞれ起用することで、小沢氏の影響力を排除する姿勢を鮮明にする考えだ。参院選後の連立の組み替えを視野に、みんなの党などから抵抗感の少ない両氏を、今後の連携の窓口にすることも想定していると見られる>。

<閣僚人事では、野田佳彦・財務副大臣の財務相への昇格のほか、事業仕分けで知名度を上げた蓮舫参院議員を消費者・少子化担当相に、菅氏の側近で鳩山内閣で首相補佐官を務めた荒井聡氏を農林水産相か国家戦略相に起用する案が浮上している>。

現状では国民新党との連立を崩しにくいので、そこは妥協しつつ、それ以外は最大限に「反小沢派」を要職につける布陣だろう。そして参院選後のみんなの党との連立も見据えている。

<民主党内には組閣を4日に終える案もあったが、菅氏は同日の記者会見で一連の人事について「多少の時間をいただき、官邸、内閣の一体性、党の全員参加を目標に、しっかりした体制をつくりたい」と述べた。7日に両院議員総会を開いて党役員人事を決め、8日に組閣して菅内閣を正式に発足させる方針だ>。

<ただ、党の資金や選挙全般を仕切る幹事長に「非小沢色」の強い枝野氏を起用することには、小沢氏に近い議員グループが強く反発している。一方、菅氏に近いグループからも「人事構想を仙谷、枝野両氏だけで進めている」との反発が出ている。人事を先送りした判断には、こうした不満を沈静化する狙いもあるとみられる>。

特にこの2つめの記事を読むと、こうしたすべての動きを小沢氏が仕切っているとは考えにくく、「反小沢派」がほんとうに力を持ってきたように思える。民主党の中でも変化が起きていて、小沢氏はいよいよ「キングメーカー」ではなくなり、むしろ「反小沢派」が主導権を取りつつあるのではないだろうか。

つまり、民主党の中で「反小沢派」が「主流化」しつつあるように思う。その意味では、私の3日のエントリは、まったくハズレでもなかったかもしれない。むしろ、私の「前原シナリオ」があまりにも直球すぎたのに対して、実際の「反小沢派」は菅氏を担ぐという「妙手」によって、それよりもはるかにうまく動いたのだ。


関連エントリ:
鳩山首相・小沢幹事長辞任 これで前原グループが主流化すれば、みんなの党との連立もありえるのでは
http://mojix.org/2010/06/03/hatoyama_ozawa_jinin
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http://mojix.org/2009/09/17/hatoyama_mitaiken