消費税を上げて法人税を下げ、再配分は所得税で調整すべし
asahi.com - 消費税、年収300万円以下は全額還付も検討 菅首相(2010年6月30日20時59分)
http://www.asahi.com/politics/update/0630/TKY201006300403.html
<菅直人首相は30日、消費税率を引き上げた場合の低所得者への負担軽減策として、年収300万円程度を下回る人に税金を全額還付する方式を検討する考えを示した。食料品などの生活必需品にかかる消費税率を低く抑える軽減税率の導入にも言及した>。
<首相は、すでに税金還付方式を検討する考えを打ち出しているが、対象の年収の目安を示したのは初めて。低所得者の負担感が増す消費税の「逆進性」への具体的な対策を示すことで、自ら呼びかけた超党派の議論に向けた機運を高める狙いとみられる>。
<この日、参院選の応援で訪れた山形市内の演説で「例えば年収300万、400万以下の人にはかかる税金分だけ全部還付するという方式、あるいは食料品などの税率を低い形にする方式で、負担が過大にかからないようにする」と述べた。青森市内での演説では「年収200万円とか300万円とか少ない人」、秋田市内では「年収300万とか350万円以下の人」と述べた。所得税の課税最低限(夫婦と子ども2人の世帯で年収325万円)が念頭にあるとみられる>。
消費税10%の話で支持率が下がってしまい、選挙向けにあわててフォローしているのだろうが、消費税そのものを還付するのはむずかしいだろう。
個人は法人のように全収支の帳簿をつけているわけでもないので、消費税の申告はいい加減になりやすく、確認する方法もない(まさか全レシート提出?)。また、低所得者にのみ還付する方式だと、低所得者が購入代行するようなスキームが作られたりして、市場取引がいびつになりそうだ。この手の「給付系」は、生活保護などですでに起きているように、イカサマや「チート」に狙われやすい。
低所得者に再配分するなら、300万円や400万円といった適当なラインで切るのではなく、また消費税還付でなく所得税にして、「負の所得税」方式できちんと計算すべきだろう。収入の低い人には、そのレベルに応じて給付するようにして、「収入が300万円を超えないようにしよう」といったおかしなインセンティブを与えないようにすべきだ。
日本も世界的な流れにあわせて、消費税を上げて法人税を下げる、という方向で税制の議論が進んでいるのは正しい。消費税で税収を確保し、法人税減税で経済を浮上させる。あとは所得税による再配分で調整すればいい。
この記事にもあるように、消費税の「逆進性」は、所得税による再配分で調整すれば問題ない。税制全体をスッキリしたものにして、おかしな優遇などもなくせば、税率も全体的に下げられるだろう。日本は税金の高さも問題だが、税制が複雑すぎるのも問題だ。
わたしは「小さな政府」支持者なので、基本的にはもちろん増税に反対であり、みんなの党が言う「増税の前にやることがある」というスタンスに近い。しかし、一気に行革を進めて政府をリストラしたり、特別会計に大ナタをふるうといったことは、ぜひやるべきだが、現実にはなかなか進まないだろう。
政府支出をいきなり半分にするといったラディカルな改革は、いくら正論であっても、すぐにはむずかしいだろう。まずは、法人税を下げて経済を浮上させつつ、消費税を上げて、高齢者も含む広い層から税金を取って税収を確保する、といった方針が現実的だと思う。よく言われるように、消費税であれば脱税もむずかしいので、まさに万人から税金をきちんと取れるわけだ。
もちろん、増税のいっぽうで政府がムダ遣いすれば意味がなく、支出をより意識的に締めていく必要があるのは言うまでもない。ともあれ、消費税増税は長年「政治的タブー」で、それを口にした政治家がみな失脚してきたのが、ようやく国民レベルでもだいぶコンセンサスを得られつつある、というところまで前進してきた。これはいい兆候だと思う。
政権が「政治的タブー」に踏み込むには、ある程度の支持率や人気がないとむずかしい。「政治的タブー」とは、国民がなかなか支持しないから「タブー」なわけで、人気がない政権が「タブー」に踏み込んだら、そこを野党に争点化されるので、「自殺行為」である。今回の消費税10%という話は、自民党が言いだしたものに民主党が飛び乗った「抱きつき戦略」だと言われているが、「抱きつき戦略」だろうが何だろうが、これによって「政治的タブー」を突破しつつあるわけで、これは快挙だろう。
http://www.asahi.com/politics/update/0630/TKY201006300403.html
<菅直人首相は30日、消費税率を引き上げた場合の低所得者への負担軽減策として、年収300万円程度を下回る人に税金を全額還付する方式を検討する考えを示した。食料品などの生活必需品にかかる消費税率を低く抑える軽減税率の導入にも言及した>。
<首相は、すでに税金還付方式を検討する考えを打ち出しているが、対象の年収の目安を示したのは初めて。低所得者の負担感が増す消費税の「逆進性」への具体的な対策を示すことで、自ら呼びかけた超党派の議論に向けた機運を高める狙いとみられる>。
<この日、参院選の応援で訪れた山形市内の演説で「例えば年収300万、400万以下の人にはかかる税金分だけ全部還付するという方式、あるいは食料品などの税率を低い形にする方式で、負担が過大にかからないようにする」と述べた。青森市内での演説では「年収200万円とか300万円とか少ない人」、秋田市内では「年収300万とか350万円以下の人」と述べた。所得税の課税最低限(夫婦と子ども2人の世帯で年収325万円)が念頭にあるとみられる>。
消費税10%の話で支持率が下がってしまい、選挙向けにあわててフォローしているのだろうが、消費税そのものを還付するのはむずかしいだろう。
個人は法人のように全収支の帳簿をつけているわけでもないので、消費税の申告はいい加減になりやすく、確認する方法もない(まさか全レシート提出?)。また、低所得者にのみ還付する方式だと、低所得者が購入代行するようなスキームが作られたりして、市場取引がいびつになりそうだ。この手の「給付系」は、生活保護などですでに起きているように、イカサマや「チート」に狙われやすい。
低所得者に再配分するなら、300万円や400万円といった適当なラインで切るのではなく、また消費税還付でなく所得税にして、「負の所得税」方式できちんと計算すべきだろう。収入の低い人には、そのレベルに応じて給付するようにして、「収入が300万円を超えないようにしよう」といったおかしなインセンティブを与えないようにすべきだ。
日本も世界的な流れにあわせて、消費税を上げて法人税を下げる、という方向で税制の議論が進んでいるのは正しい。消費税で税収を確保し、法人税減税で経済を浮上させる。あとは所得税による再配分で調整すればいい。
この記事にもあるように、消費税の「逆進性」は、所得税による再配分で調整すれば問題ない。税制全体をスッキリしたものにして、おかしな優遇などもなくせば、税率も全体的に下げられるだろう。日本は税金の高さも問題だが、税制が複雑すぎるのも問題だ。
わたしは「小さな政府」支持者なので、基本的にはもちろん増税に反対であり、みんなの党が言う「増税の前にやることがある」というスタンスに近い。しかし、一気に行革を進めて政府をリストラしたり、特別会計に大ナタをふるうといったことは、ぜひやるべきだが、現実にはなかなか進まないだろう。
政府支出をいきなり半分にするといったラディカルな改革は、いくら正論であっても、すぐにはむずかしいだろう。まずは、法人税を下げて経済を浮上させつつ、消費税を上げて、高齢者も含む広い層から税金を取って税収を確保する、といった方針が現実的だと思う。よく言われるように、消費税であれば脱税もむずかしいので、まさに万人から税金をきちんと取れるわけだ。
もちろん、増税のいっぽうで政府がムダ遣いすれば意味がなく、支出をより意識的に締めていく必要があるのは言うまでもない。ともあれ、消費税増税は長年「政治的タブー」で、それを口にした政治家がみな失脚してきたのが、ようやく国民レベルでもだいぶコンセンサスを得られつつある、というところまで前進してきた。これはいい兆候だと思う。
政権が「政治的タブー」に踏み込むには、ある程度の支持率や人気がないとむずかしい。「政治的タブー」とは、国民がなかなか支持しないから「タブー」なわけで、人気がない政権が「タブー」に踏み込んだら、そこを野党に争点化されるので、「自殺行為」である。今回の消費税10%という話は、自民党が言いだしたものに民主党が飛び乗った「抱きつき戦略」だと言われているが、「抱きつき戦略」だろうが何だろうが、これによって「政治的タブー」を突破しつつあるわけで、これは快挙だろう。