2010.08.18
ノートPCが1000円になったらどうなるか
少し前、こういうニュースがあった。

ロイター - インド、1台35ドルの世界最安ラップトップPCを開発(2010年07月23日 17:38 JST)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-16420120100723

<[ニューデリー 23日 ロイター] インドは、1台わずか35ドルの、世界で最安の「ラップトップ・コンピューター」を開発したと発表した。シバル人的資源開発相によると、このラップトップは学生向けに開発したもので、タッチスクリーンを採用している。
 世界のメーカーとの間で、量産に向けて協議を開始した。
 同相は記者会見で「マザーボード、半導体、プロセッサー、接続機能などすべてを含め、コストは約35ドルだ。それには、メモリー、ディスプレイなどすべてが含まれる」と述べた。インターネットブラウザー、PDFソフト、ビデオ会議機能なども備えており、ユーザーのニーズに応じて新たな機能を組み込むことも可能だという。
 基本ソフト(OS)はリナックスで、2011年から高等教育機関で導入を予定している。また、価格を20ドルまで引き下げることを目指しており、最終的には10ドルまで引き下げたいとしている>。

1台35ドルでもじゅうぶん安いが、最終的には10ドルにしたいとのことで、1台約1000円である。

ノートPCが1000円になったらどうなるか。

1000円というと、値段としては電卓くらいの感覚だ。1000円では、日本のメーカーは当然作れないので、PCメーカーは台湾やインドなどに立地する数社に絞られていき、徹底的にコモディティ化した部品だけからなる「日用品」になるだろう。

PCに入るOSのほうも、いまのOSよりもはるかに単純化したものになり、ブラウザだけになるとか、iPhoneやAndroidのようなモバイル用のOSとほとんど同じものになるだろう。

PCはほとんどディスクレスに近くなり、データをPC内に自前で持つことはほぼなくなり、クラウドのどこかに置くのが普通になる。

クラウドや仮想化の技術はこれからますます発展していくので、物理的なPCはむしろ減少に向かうかもしれない。データセンターの中ではサーバ向けの物理的なPCが増えていくのだが、わたしたちが直接触ったり、目にする「いわゆるPC」は減っていくような気がする。

PCというのは今後、ブラウザでネットを見たり、クラウドのサービスやデータにアクセスするのに使うだけで、要するに「ブラウザが入っている箱」のような存在になっていくと思う。「PC」は「ブラウザ」とほぼ同義になるのだ。

これからの「ソフトウェア」はその大半が、デスクトップでなくサーバ上・ネット上・クラウド上で動くものになり、「データ」に接近していくと思う。いわゆるデスクトップアプリの大半は、せいぜいブラウザの機能拡張レベルで実装されるようになるだろう。ブラウザ以外の専用アプリはだんだん減っていき、それを使うのは一部の「専門職」の人だけになると思う。

物理的なPCがコモディティになれば、ビジネス的に見ると、付加価値を生む勝負の大半はソフトウェアとデータで決まることになる。ソフトウェアを作ったり扱える能力、いいデータを作ったり集められる能力は、これからさらに価値が上がるだろう。というよりも、ほとんどあらゆる産業で、ソフトウェアやデータを扱う仕事がますます増え、その能力を持つ人材が求められるようになると思う。

こういう観点に立つと、例えばいまの学校教育は、あまりにも古めかしいと感じる。ただ講義を聞いて教科書を読んでも、ほとんど何も身につかない。どの学科をやるにしても、もっとソフトウェアやデータを扱い、何かを作ったり、動かしたり、シミュレーションしながら、実践的に学ぶようなスタイルのほうがいい。

ノートPCが1000円になった頃には、教室の風景はきっとそうなっていると思う。


関連エントリ:
OLPCプロジェクトの次世代PC「XO-3」はタッチスクリーンの薄型タブレット 2012年に100ドル以下で登場
http://mojix.org/2010/01/03/olpc_xo3
教室における新しいインターネット・リテラシー
http://mojix.org/2005/08/28/233314