2010.11.14
自由裁量の少ない仕事は寿命を短くする?
WIRED VISION - 組織とストレス:「自由裁量の度合い」が寿命と関係(2010年11月9日)
http://wiredvision.jp/news/201011/2010110923.html

仕事で自由裁量が少ない人は寿命が短くなる、という研究結果を紹介した記事。

ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジの公衆衛生学教授Michael Marmot氏が、英国政府(「ホワイトホール」と呼ばれる)に勤める公務員を対象に、数十年にわたって調査した結果だという。

<ホワイトホール研究とは、1967年から、ロンドン中心部で働く約2万8000名の男女を対象に行なわれている、大規模な縦断的研究(同一の対象者を長期にわたり継続的に調査する研究)だ。同研究が注目に値する点は、その均一性にある。被験者は全員が英国の公務員、すなわち大規模な官僚機構の歯車なのだ。全員が同じ健康保険システムに所属し、失業の不安は無い>。

<その差異は劇的なものだった。多くの公務員を数十年にわたって追跡した結果、40〜64歳の年齢層において、階層の最下段にいる公務員は、トップにいる人々と比べて死亡率が4倍にのぼることが明らかになったのだ。遺伝的な危険因子や、喫煙、過度の飲酒といった健康にリスクをもたらす行動を考慮に入れても、序列の最下層にいる公務員は依然、トップにいる人々と比べて死亡率に2倍近くの開きがあった>。

<この結果からMarmot氏は、健康状態に生じる差異の大部分は、心理社会的要因、特にストレスによって引き起こされるものだと結論付けざるを得なかった。われわれが自分の置かれた社会的地位の影響を非常に受けやすい証拠として、英国公務員の最下層からランクが上がった人では、心臓疾患を罹患する確率が最大13ポイント低下したというデータが出ている>。

<ホワイトホール研究は、上級管理職のようなハードな仕事は心臓病や死亡リスクを若干上昇させるものの、裁量権の全くない仕事のほうがより危険ということを示している>。

この研究結果は、すごく納得感がある。

記事にも書かれているが、地位が高い人の場合、責任から来るストレスや緊張はあるものの、「自由裁量」が大きいので、仕事に対する満足度が高く、不満が蓄積しにくい。

いっぽう地位が低く、「自由裁量」が小さい人の場合、とにかく決まったこと、言われたことをそのままやるだけなので、仕事に対する満足度が低く、不満が蓄積しやすい。

「責任もあるが自由もある」ほうが満足度が高くなり、「責任もないが自由もない」ほうが満足度が低くなる。よって、前者のタイプのほうが寿命が長くなり、後者のタイプのほうが寿命が短くなる、というのは当然だという気がする。

とはいえ、相関関係は因果関係ではないので、自由裁量という「原因」が、寿命という「結果」を生じさせている、とは必ずしも言えない(「原因と結果」)。もともとの能力や気質が「原因」で、自由裁量、つまり組織での地位はその「結果」であり、また寿命もその「結果」である、とも言えるかもしれない。


関連エントリ:
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